処理用薬品

モノクロ写真に必要な薬品
買い忘れのないように、なおかつ余計なものを買わないようにしましょう。
とにもかくにも、初心者の方には、「無難な製品」を選ぶことをお勧めします。
このページでボクがお勧めとしている「無難な製品」は、なにも初心者向けに使い方が簡単だけれど性能が劣る、という事はありません。

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フィルム現像液
おおきく分けると、用途に応じて「標準現像液」「微粒子現像液」「増感現像液」という風にありますが、実際のところ「標準現像液」でも十分に微粒子現像できると言っていいので、最初はそれほど意識する必要はなく、いわゆる「標準現像液」を買い求めればよいと思います。
剤型で、粉末になっているもの、濃縮液になって売られている物があります。
濃縮液タイプは、買ったままの状態で保存し、使用直前に必要分を水で薄めて使います。 未使用分の保存性も良く、保存場所もとらないうえ使い方が簡単ですので、現像する頻度が低い方には非常に便利だと思います。 コダック「T-MAXデベロッパー」、イルフォード「LC-29」などの名前が挙げられます。

とはいえ、粉末で売られている物がまだまだ一般的です。 これらは購入後に水に溶いて「保存液」を作り、使用時にはそのまま、あるいはさらに薄めて使います。 標準現像液としては、コダック「D-76」が歴史も実績もある現像液で、「Xtol」は新しい世代の製品です。 イルフォードの「ID-11」は基本的に「D-76」と同じと考えて良いです。 いずれも標準現像液という位置づけですが、十分な程度に微粒子現像液でもあります。

特に微粒子現像液と銘打たれているものでは、富士「ミクロファイン」、コダック「マイクロドールX」、イルフォード「パーセプトール」などがあります。これらはどれもほぼ同じようなものです。

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しかし、多くのフィルム現像処方が開発された大昔と違い、フィルムの微粒子化が進んだ現在では、標準現像液でも十分ですので、今日的にはあまり出番はないかも知れません。
増感現像液と銘打った製品は少なくなりましたが、富士の「スーパープロドール(略してSPDと呼ばれることが多い)」の名前が挙げられることもあるかと思います。しかしボクはこれには否定的です。 現行商品の中では、増感現像にはコダック「Xtol」をお勧めします。
現像液には従来、経皮毒性があるとされるメトールや環境に影響があると言われるハイドロキノンが主に使われているのですが、コダック「Xtol」は、人体への影響が少なく環境に優しい原料を使っている新しい世代の現像液で、微粒子の低感度フィルムから超高感度フィルムまで幅広く使用出来ます。

印画紙現像液
フィルム現像液にも増して種類があれこれあって迷うのが印画紙用です。
実際、フィルムよりも印画紙の方が現像液によって違いを楽しめるのも確かなのですが、市販のものではそれほど変わった物はなく、またレジンコート紙(RC紙)ではバライタ紙(FB紙)に比べてその違いも出にくく、やはり最初の頃はひとつの種類を使っていれば十分だと思います。

いっぽう、フィルム現像と違って印画紙の現像(プリント)は失敗してもやり直しが効きますので、フィルムよりも冒険しやすく遊べる、とも言えます。
フィルム現像液同様、粉末で売られている物と濃縮液体タイプの両方があります。
伝統があり一般的なのはコダック「D-72 デクトール」で、富士の「コレクトールE」は環境に優しい原料を使っています。これらは共に粉末タイプ。

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しかし印画紙用現像液は1度に使う量が多いので、粉末を水に溶いて保存するタイプは保存場所を結構必要とします。

そこで、入門用にボクのお勧めはイルフォードの「マルチグレードデベロッパー」や中外写真薬品の「マイデベロッパー」などです。
これらは濃縮液体タイプで、使用直前に薄めて使う手軽さも魅力です。 オリエンタルからは純黒調の「オリトーンPB」、冷黒調の「オリトーンCB」が共に濃縮液体タイプで販売されています。
もちろん、ある程度プリント作業になれてきたら、違う表現を求めて現像液を変えるのも面白いと思いますが、まずは腕を上げてから、です。

粉末タイプの現像液は、溶解後、薬品が十分に溶けきるまで少し時間をおく事が望ましいです。使用直前に粉末を溶かすのは出来るだけ避け、数時間おいた方が無難です。
また、D-76などは1日置かないとダメ、といった言われ方をしますが、もし現像力を安定させるのが目的ならば1日目というのは逆に避けた方が良く、3日ほど寝かせる必要があるそうです。 これはフィルム現像液、印画紙現像液に限らず、ハイドロキノンを使っている現像液に共通です。
ただし、現像液は作られた時点から変化・劣化が始まり、現像力が厳密に安定する瞬間などありませんから、あまり気にしてもしょうがないと思います。 D-76は保存液の保存性が良い現像液で、密閉して保存すれば3ヶ月後でも十分に実用範囲ですが、溶解後3日を待たないと安定しないので使えないと厳密にやるのであれば、溶解後1週間経った保存液はもう使えません。 化学の実験がしたい場合は別でしょうけど、通常の写真目的では少々の事は誤差の範囲と考えていいと思います。

停止液
現像の進行を止めるもの、と考えて結構です。 現像液はアルカリ性で、またアルカリ性でないと現像が出来ません。 そこで、酸性の停止液を使い、現像時間が過ぎたら現像を止めるわけです。 また、続く定着液は酸性のものがほとんどですので、定着液の疲労を少なく押さえる、現像液を定着液に出来るだけ持ち込まないという意味もあります。
市販されている物はおおむね「酢酸」で、製品名も「停止液」ではなく「酢酸」とか「氷酢酸」として販売されているはずです。 イルフォードや中外写真薬品にはインジケーター付きと言われる製品もあり、これは停止液の能力が落ちると色が変化して知らせるというもの。
また、酢酸の停止液は臭いが気になるので、クエン酸を使った臭いの少ない製品もあるようです(酸性の迅速定着液との併用はお勧め出来ない)。
いずれにしても、ボトル入りの液体を薄めて使い、処理量が少なければ再使用も可能です。インジケーター付きならなお安心です。 しかし、原液の使用量が少なく価格も安いため、実際には1回使い捨てというパターンが多いのではないかと思います。
フィルム現像では酸性の停止液ではなく短時間の水洗でもそれほど困りませんが、印画紙では定着液を長持ちさせるためにも使った方がよいかと思います。

定着液
フィルム用、印画紙用という区別はありません。 いずれの場合も、現像した画像を固定する薬品だと考えてください。 現像というのは光の当たったハロゲン化銀を銀に変換する工程なのですが、定着処理では銀にならなかったハロゲン化銀だけを除去し、画像を作っている銀だけが残ります。
定着液には、大きくわけて「硬膜化タイプ」と「非硬膜化タイプ」があります。
日本国内でメジャーブランドである富士写真フィルムの製品「スーパーフジフィックスL
」などが、従来から全て硬膜化タイプなこともあって、日本ではまだまだ硬膜化タイプを使う方が多いようですが、ボクは全て非硬膜タイプを使っていますし、オススメします。
どうやら素人のボクが言っても信用されてないみたいですけど、イルフォードはフィルムについては特別な条件がある場合以外は硬膜化はもはや勧めない、印画紙については硬膜化は一切勧めないという事になってます。
硬膜タイプの定着液が必要なケースは、フィルムの現像から水洗に至るまでの過程で、どうしても処理温度を高くせざるを得ない(イルフォードは30度以上になる場合としている)、熱を与えるなどしてフィルムを短時間で乾燥させる必要がある、現像やその後の過程で表面を擦る可能性がある、(一部東欧や中国製など)製造時の硬膜処理がされていない古いタイプのフィルムを処理する、ローラートランスポートなどの機械で現像するなどの場合だけと考えていいはずです。
そうでない場合、硬膜化は水洗時間が余計にかかる(十分な水洗を行いにくくなる)などのデメリットの方が大きいでしょう。
印画紙ではなおさら、硬膜化にはデメリットの方が多いと思います。水洗についてもそうですし、調色やスポッティングもし辛くなります。
また、ほとんどの定着液は酸性であると書きましたが、実はアルカリ性の定着液もあり、その方が何かと優れています。 しかし残念ながら日本国内で広く市販されている製品がありませんので、ここでは具体的な商品をお勧めすることが出来ません。
個人的には、イルフォードの「ハイパムフィクサー」や中外写真薬品の「マイフィクサー」がおすすめです。 非硬膜化タイプですが、硬膜化が必要な場合には別途硬膜剤を追加する事が出来ます。
「ハイパムフィクサー」や「マイフィクサー」は濃縮液体タイプなので水で薄めて使いますが、定着液は現像液などに比べると空気による劣化が比較的少なく、ほとんどの場合は処理量によって寿命をむかえるので、使った後は容器にもどして保存、次回のセッションで再使用します。
しかし、現像と違って定着は処理の結果が見た目では分からないので、疲労具合(処理した量)はしっかりチェックしておく必要があります。

水洗促進剤

フィルムにしろ印画紙にしろ、定着処理が終わったら水で薬品を洗い流さないとなりませんが、水洗促進剤はその際に水洗の効率を高め、保存性に悪影響のある成分や薬品の残留を防ぐために使われます。 分かりやすく言えば、水洗の時間を短くするためのもの、です。
非硬膜化タイプの定着液を使っているという前提にはなりますが、フィルム、レジンコート紙(RC紙)ではほとんど使わなくても大丈夫です。硬膜化タイプの定着液では必須です。 印画紙の場合、バライタ紙(FB紙)では使った方が確実ですし、処理時間を短く出来ます。印画紙は水に浸かっている時間が長くなるとそれだけ傷む(RC、FB共に)ので、出来るだけ短時間で水洗が完了する方法が望ましいです。
非常に安価なものですが、なかなかに使いでがあります。
富士フィルムの「QW」、イルフォード「ウォッシュエイド」、中外写真薬品「マイウォッシュアップ」、コダック「HCA」などの製品が挙げられます。

水滴防止剤
フィルムや印画紙を水洗し終わったら、最後に乾燥という作業が待っています。 この時に、表面に水滴が残っているとそこにムラが出来、台無しになってしまいます。
水滴防止剤はいわゆる界面活性剤で、水の表面の張力を失わせて水滴が出来るのを防ぎます。
富士写真フィルムの「ドライウェル」という製品が一般的です。 非常に安価なもので、かなり使いでがあります。 薄めて使いますが、この時の溶液はフィルムなり印画紙に染み込んで残るものですから、可能なら精製水、最低でもフィルターを通した水を使いたいところです。
液体を水に薄めるので簡単にすぐ使用液を作れそうな気がしますが、混ぜてすぐの使用液だと滑らかさが無く逆効果という事もあるようです。使用直前に薄めて使用液を作る場合、混ぜた時に出来る細かい泡が自然に消えるくらいは待った方がよいので、作業の流れの中では早い段階で作っておきましょう。

画像保護剤
画像保護剤として、富士写真フイルムの「Agガード」という製品があります。 これは銀画像の保護を目的としたもので、プリントの長期保存を必要とする場合によく使われますが、フィルムにも使えます。
フィルムにAgガードを使う場合は、浸した後にスポンジで表面を拭き取るか、フィルムの乳剤層に塗るような感じで処理します。反対側のベース面に多く付着していると白っぽく曇ることがあるようです。

調色剤
セピア調やブルー調など、印画紙の色調を変えた表現に使います。 また、セレニウム調色や硫化調色、金調色は銀画像の保存性を高める事が出来るので、その目的でも行われます。 ただ、健康や環境への影響が大きい薬品が使われることもありますし、入手が困難だったりするので、ここでは特にお勧めということはしません。 調色せずに保存性だけ高めるのには富士のAgガードが良いでしょう。
「セピア調色」「ブルー調色」は大型写真用品店でごく普通に販売されています。 日本で売られている「セレニウム調色」にはコダックの製品「ラピッドセレニウムトナー」があり、高価なものではありませんが、入手先はプロ向けの販売店に概ね限られてしまうようです。

一般的に使われる薬品は以上です。