簡単★自作4x5引伸し機 by 和田尚樹

大判カメラでモノクロプリント製作に取り掛かろうとするとき、悩み事の一つが、引き伸ばし機の導入だと思います。
僕も、始めて自宅暗室に導入した引き伸ばし機が、中判66までしか焼けないものだったので、4×5”を始めるときに引き伸ばし機をどうするか、というのが悩みでした。
値段がどうこう、というより場所の問題もありますしね。

そういうわけで、僕は大型の引き伸ばし機が買うところまで思い切れなかったので、僕は今のところ、フィールドカメラの後ろに光源をつけて、それを引き伸ばし機代わりにして、ネガを引き伸ばしています。

今回、自分の使ってる散光式の引き伸ばしヘッドの作り方を紹介させてもらおうと思います。
びっくりするくらい簡単で、紹介するほどのことがあるのか、書いてる途中で心配になったくらいです。
そんな簡単なものでも、引き伸ばし機の購入が障壁になって大判を始められていない人を後押しできれば良いなと思うので、紹介させていただきます。

もちろん、精度の良いプリントを得たいと思ったときには、市販されている引き伸ばし機の購入をオススメします。
それでも、自分がプリント作るときに、自作であることが特に大きなハンディキャップになってるという意識は持っていません。

さて、デザインに際して特に気をつけたのが、

    1.自分の加工精度が、直接プリントに関連する部分の精度に影響を及ぼさない
    2.難しい加工技術がいらない

という二つです。
今回、加工は、木工用ボンド、カッターナイフ、糸鋸なんかがあれば十分です。材料調達が上手くいけば木工用ボンドとカッターナイフ、テープだけで済みます。
使った材料は、全部、ホームセンターで簡単に手に入るものです。
カメラはもちろん、持ってるとして、他にも三脚が要ります。
微調整にはギア付きのセンターポールなんか付いてると使いやすいです。
僕の三脚には付いてないので、逆にイーゼルの下に水平な台を追加する方法で行っています。
もちろん、三脚は重ければ重いほうがいいです。
また、三脚でなくても、引き伸ばし機が、ヘッドが外れて、カメラが取り付けできるようなコピースタンドみたいなカタチになるものなら、それを土台に使ってもいいです。

まず、自作引き伸ばし機が、どんなカタチのものを使ってるかというと、

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こんな風になります。床にイーゼルを置いて使ってます。
それでは、材料の紹介から。

—–カメラと三脚以外に必要なもの—–

散光ヘッドを作るために買ったのは

(1)カメラの後ろの大きさに合う筒。

自分で作っても良いけど、僕は東急ハンズの木工コーナーにそのまま目的に合うものを見つけました。木の筒です。
これは、35cm角なのでバイテン用です。
普通の人はオシャレな収納家具に使うようです。

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ネガサイズより一回り大きい大きさの箱がいいです。
   
はじめの写真を見てもらったらわかるように、シノゴ用に買った筒は、トヨフィールドの後枠にジャストフィットします。
これに求められる要素は、ランプの重みに耐えうる程度の頑丈さ、筒の側面が光を通さないこと。
さらに言うと、軽いほうがいいと思います。

(2)スチレンボード。

筒の内側に貼って光のまわりを良くします。

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(1)2mm厚のアクリル板 オパール(乳白)

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散光式の引き伸ばし機では、ネガと光源の間に散光板が入りますが、ネガキャリアのほうに組み込みます。
僕は、アクリル板はまっすぐだと思うので、片側だけでもネガに密着させることはネガの平面性をあげるのにも少しは役立つように思っています。

(2)黒いマットボードとか、ネガを押し付けても傷つけない、そこそこしっかりしたもので、かつ光を通さないもの。

僕はゴムマグネットシートを安く見つけたので買いました。

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これは、ネガキャリアというか、ネガマスクに使います。
なるべく、たわまないものの方がいいです。
でも、あまり硬いと加工が大変です。
表面はなるべく反射の少ない素材の方がいいと思います。

ランプは、何でもいいと思います。
ソケットが付いてて、引き伸ばし機用のランプが付けばいいと思います。
ちなみに、ソケットの口金の規格はE26のものを買っておけば問題ないです。
僕は66用の小さい引き伸ばし機用のランプを取り外して乗せることが最近は多いです。
初めはこんなんをつくってました。

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でも、中判の引き伸ばし機のランプの方が使い勝手がよかったので、始めの写真にあるように最近はそれをつかってます。
あと、何でもいいので、遮光できるもので、自分の加工しやすいものを用意してください。
僕は、印画紙を包んでる黒い袋をつかいました。多分、自宅でプリントする人ならいっぱいあると思います。

—–製作工程—–

これだけ買えばもう、作るのに30分もかかりません。

まず、筒の内側にスチレンボードを貼って散光ボックスとします。

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さらに、あとからランプを乗せますが、そのときに光が漏れないように、なんらか遮光の加工を施します。
僕は印画紙の箱を切って印画紙の入ってた黒い袋を巻きつけました。

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次に、ネガマスクと、散光板をカメラの後ろにサイズが合うように切ります。
ネガマスクにはフィルムサイズのアナを開けて、外側のサイズはカメラの後ろに合わせて、こんなカンジに切ります。
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アクリル板も似たような大きさに切ります。
写真は、後のセッティングのところに写真を載せるので必要ならば見てください。

あとはセッティングするだけ。
僕は、引き伸ばし機のヘッドを外して、フィールドカメラをセットしてこんな風にして使うこともあります。
小さいサイズの引き伸ばしだと、こっちの方が楽です。この場合、引き伸ばし時にヘッド位置が微妙に落ちてきたりする可能性には気をつけてください。

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カメラの上にネガマスク、ネガ、散光板、散光ボックス、ランプの順に置いていきます。

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あとは各自、ランプを点灯させたときに光が漏れすぎるところを塞いでください。

参考までに、僕の場合は、散光ボックスとカメラの間からもれる光が、壁なんかで反射するのが気になるので、こういう金属パーツを使って塞いでいます。
ビューカメラの蛇腹の端の金属パーツです。

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トヨフィールドの場合、後ろのスプリングバックの枠がビューカメラと共通なので、ビューカメラ用の蛇腹の枠がフィールドカメラの後ろにちょうどはまります。
ジャンクなんかで使えなくなった蛇腹が売られていることがあるので、そういうのを拾ってパーツを回収しておくと便利です。

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—–セッティングと精度について—–

引き伸ばしの精度はネガが平坦に置かれているか、ということに依存するわけですが、この製法の場合、そこの精度はネガマスクのたわみの少なさだけに依存しています。
僕は、ネガマスクに乗せるだけで気にならなかったりしますが、その精度が気になる場合は、散光板のほうにパーマセルテープか何かで貼ったりするのがいいかもしれません。
アクリル板は、まっすぐだと思っていいと思いますから。
平面性は、ネガマスクをもっと硬い、まっすぐな素材で作ればよくなると思います。

あと、セッティングは気をつけてください。
印画紙面に対して光軸が垂直でないと画面片側だけでピントがボケたりします。
もし、周辺光量が足りなかったり、電球のカタチが写ってしまうような場合は散光板と電球の距離を大きくしてください。
僕の場合は、電球の先と散光板まで20cmくらい取っています。

—–紹介するに当たって考えたことなど—–

僕の簡易引き伸ばし機の紹介は、以上です。
かなり、単純化して設計しました。
引き伸ばしに必要な最小限のものしか備えていないと思います。
こんな簡単でいいのか、と思いますが、多分、自分で作るんだから、出来る限り単純なものの方が信頼性は高いと思います。

ほんとに拙い設計の引き伸ばし機ですが、現に、僕は、これでプリント作業を楽しんでるわけです。
今回、”作り方そのもの”、よりも、”原理的には、この程度で出来るんだ”というようなことも見ていただいて、スタート前のハードルを下げることの手助けになればいいなと思って、紹介させていただきました。

もし、簡単にもっと使い勝手のよくなるような改良があれば、フォーラムのほうか、Facebookのほうにいると思うので、教えていただければ幸いです。
よろしくお願いします。

和田尚樹