簡単な定着液の疲労度テスト

定着液の疲労というのは、実際に定着処理した時にはなかなか気がつくものではありません。 よっぽど疲労し切ってれば「ありゃりゃ」と思うような状態になるかもしれませんが、普通は見た目では分からず。
分からないけど定着液の能力が無くなってて定着不足となると、何年もしてから「あらら」というような事態になったら困りものですよね。
そこで、製品の説明書きに目安として示されている、「1リットルで135フィルム○○本」とかの処理量を参考にするわけです。
暗室作業の入門本などにも、「使用液を作成したらボトルにシールを貼り、処理本数をメモしていく」とか書かれてるかと思いますが・・・そんなことしますかね、実際。
それと、実際のところ、定着処理の時間はどれくらいが適正なんでしょうか。
現像と違って、定着の時間は少々ラフでも構わないのですが、時間が不足では困りますし、逆に長すぎても悪影響があります。
そこで、非常に簡単に出来る定着液のテストをご紹介します。

手順

    • 未現像のフィルムの切れ端を用意します。 撮影済みのフィルムをリールに巻くとき、リーダー部分を切り落としたりしますでしょ。 それを取っておいて使います。 長尺ロールからバルクローディングしてる方は半端のフィルム片をたくさん持ってますよね。
    • メスカップでも紙コップでも何でもいいですから、容器に定着液を入れます。
    • フィルムの切れ端を半分だけ液に浸けて、浸けた部分が透けるまで静かに待ちます。 液に浸けた半分が綺麗に半透明、外に出ていたら半分が元のままのフィルムの切れ端が出来たら、今度は全部を液に浸けちゃいます。
    • そして、ここから時間を計測します。 腕時計のストップウォッチでも暗室時計でも、普通の時計(秒針のあるヤツね)でもOKです。 要は、時間が計れればいいのです。
    • 定着液に浸けたフィルム片は放ったらかしで、観察だけします。
    • 計りたい時間は、先に半透明にしておいた部分と、後から液に浸けた部分の見分けが付かなくなるまでに何秒かかるか、です。
    つまり、定着液によってフィルムがクリアになる所要時間です。 この所要時間を、クリアリングタイムと呼びます。

クリアリングタイムと必要な定着時間
クリアリングタイムが計れたら、この定着液でのこのフィルムの定着処理に必要な時間が分かります。
一般的なモノクロネガフィルムで必要な定着時間はクリアリングタイムの2倍、コダックT-MAX、イルフォードDELTA、富士アクロスなど、新しい世代のフィルムでは、クリアリングタイムの3倍と言われています。
つまり、クリアリングタイムが例えば60秒だったら、2~3分が必要な定着処理時間という事になります。
この時間は、新鮮な使用液であっても定着液とフィルムの組み合わせによって若干の違いがありますから、自分が使っている薬品とフィルムとでテストすることで、より安心して使えるデータが得られるでしょう。

いつテストするか
初めて使う定着液、初めて使うフィルムなら、最初に使用液を作ったときにテストします。 要するに、新鮮な定着液で得られる、もっとも短い処理時間、というのを知っておくわけです。
フィルム1本や2本くらい処理してもたいして変わるわけではないので、フィルム現像の度に毎回やる必要はありません。 そう言えば結構頑張って現像したなぁと思ったらテストしましょう。
あれ、いつ作った使用液だったかなぁと、不安になったときにもテストしましょう。
何本かまとめて現像する人は、セッションの前にテストするのがいいかも知れませんね。

どのくらいまでOKなのか
定着液が疲労するほどにクリアリングタイムは長くなっていきます。 それに応じて定着処理時間も延長すればいいわけですが、しかし、例えば極端な話、クリアリングタイムのテストで5分掛かったら、2倍の10分間定着処理をすれば良いんじゃないかという事になっちゃいますが、それはどうかなぁと不安でもありますよね。
イルフォードによれば、クリアリングタイムが新鮮な使用液での2倍かかるようになったら、新液に交換するようにとの事です。
ボクの場合、自分で決めてある時間をオーバーしたらそこで使用をストップ・交換です。 つまり、マメにテストしてそのたびに定着処理時間を延長するというよりも、最初からちょっと余裕を見て定着時間は長目にしておき、テスト自体は疲労がひどくなっていないことを確認するために行う感じです。
テストで定着液がひどく疲労しているのが分かったら、新しい使用液を作ります。
古い定着液にはフィルムから取り除かれた銀が含まれていますので、そのまま排水口に流したり庭に撒いたりしてはいけません。
バケツに使用済みの定着液を入れ、スチールウールを沈めておきます。 しばらくすると銀が分離されて沈殿しますので、上澄みは捨てて、沈殿物は産廃業者さんに出すか、燃えないゴミでしょう。