処理薬品の自家調合

「市販の薬品では希望する結果が得られない」
そう思った方にボクはまず、「もういちど基本を見直して」とアドバイスしたい。 なによりも既存のフィルムや印画紙や薬品をしっかり使いこなすことが第一なんである。
その上で「やっぱり物足りない」「狙った表現が出来ない」「要するに飽きた」という場合にはもう、自家調合へと進むしか有りませんね。
残念なことに日本で市販されている薬品の種類って少ないので、なんだかんだいって物足りなくなるのは仕方ないと思うんだよね。自家調合をするのは必然なんじゃないかなぁと思ったり。
と言うわけで、「脱!ビギナーのための自家調合」です。
「脱!ビギナー」シリーズで良いのかどうか微妙な内容だけど・・・

自家調合をするからには次のことに留意しよう

    1. 薬品の取り扱いには充分な注意を払う。いやもうトコトン気をつける
    2. 自分が何のために何をやっているのかを常に意識する
    3. 経験から新しい発見があったら情報を公開し、広く知識を共有出来るよう取りはからう

予備知識

自家調合に必要な道具 ~ たいして必要な物はありませんが

    まずなんと言っても秤が必要です。
    性能的には、最低でも0.1g の分解能がある事が、まぁ条件。 もっと細かいといいですが、メチャメチャ高価になってしまうので考え物。 0.1g で我慢しましょう(と言いつつ、0.01gのを買っちゃいましたが)。
    少ない量、より正確な計量が求められる時に手軽で確実な方法は「たくさん作る」です。 2倍作れば計量の精度は2倍ですからね。4倍作れば精度は4倍なんです。
    少ない量の薬品の場合、ある程度正確に計れる量を水溶液にして、液体として計量して使うという方法もあります。 残りが無駄になることもありますけど、保存の利く水溶液なら問題なしです。

    通常、1リットルの保存液を作るのに使われる薬品は1種類あたり多くても 100g 程度なので、一度に量れる重さは200g もあれば充分です。それ以上は何度かに分けて量ればいいので、あまり問題にはなりません。 予算が限られていて選択の余地がある場合は、最大重量よりも分解能を優先しましょう。 防水のものが理想だと思います。
    価格は1万円台半ばくらいまでは覚悟したほうがいいかな。

    写真用薬品のほとんどは人体に有害なので、手袋、マスク、などが有った方がイイですね。 それじゃオマエはちゃんと手袋・マスクしてやってるのか、と言われると困るんですが、一応書いて置いたという次第です。
    でもちゃんと防護した方がイイと思いますよ。

    計量時にスプーンの様なものを使いますが、食用と共用するのは気持ちが悪いので100円ショップでなにか買ってきましょう。
    料理用の計量スプーン(小さじと大さじがセットになってるヤツ)をボクは使ってます。 慣れてくると(慣れなくても量れば分かるんですが)、亜硫酸ナトリウム大さじ1杯何グラム、なんつって手抜きも出来ます。

    メーカーによってはビニール袋に入った薬品を箱に詰めただけのパッケージがあるので、そうした場合には移しておく容器が要ります。きっちり密閉出来るもの、台所用品とかで何か見つけましょう。
    また、使い終わって空になった容器をとっておいて、次に袋入りを買った時に詰め直します。 ちがう薬品に使う時はちゃんと洗って乾かしてから。忘れずにラベルを貼ってね。
    化学調味料と間違えて料理にかけたら悲惨だよ。 ハイドロキノンなんか見た目で味の素と区別出来ないし。舐めれば分かるけど確率2分の1のロシアンルーレットだもんな。

    その他、溶解に使うビーカーや、液体の計量に使うメスシリンダーなどは普通に写真薬品を扱うために持っているはずです。ただ、極少ない量の液体を量る事があるので、スポイトがあると良いかも知れません。
    まぁ、そんなモンです。

    薬品を秤に載せる時、量の多い物は紙コップなどを使うと便利です。
    ほんの数グラムの薬品は紙に載せますが、スーパーでお弁当のおかず入れとかカップケーキ用とかで手頃なのが売ってます。。

    もし予算が許せば、pH計があると良いです。最近は1万円未満であれこれ買えるようですが、pH計は測定精度を維持するため校正という調整作業が要りますのでご注意を。

主な薬品と役割 ~ 処方に出てくる薬品の簡単な説明

    現像主薬
    感光したハロゲン化銀を銀に還元する役を担う薬品。主にメトール、フェニドン、ハイドロキノン、アミドール、グリシン、アスコルビン酸など。
    ハロゲン化銀を還元することで、自分は酸化します。
    一番単純には、メトールだけで大丈夫ですが、酸化したメトールを還元して現像力を維持する役割をハイドロキノンが果たすため、メトール(M)とハイドロキノン(Q)を組み合わせたMQ処方というのが一般的です。過生成と言いますが、組み合わせることで単体でより飛躍的に現像力が増します。

    保恒剤
    未使用時の保存性向上、現像中の現像力維持のがめに加えられる薬品。主に亜硫酸ナトリウムなど。
    現像主薬は現像によって、また空気に触れることによって酸化しますが、保恒剤が現像主薬を還元することで現像力を維持させます。
    亜硫酸ナトリウムは銀粒子を溶解する作用があるため、微粒子化のために多めに、高鮮鋭度化の目的で少なめに、使用量を変化させます。

    アルカリ剤
    処理液のpHを調整する役割で加えられます。現像の進行には現像液のpHが大きく影響し、アルカリ性になるほど一般に現像力は高くなります。穏やかなアルカリで主に微粒子現像液ではホウ砂、印画紙現像液では炭酸ナトリウムなどが一般的に用いられます。

    pHの例 (pH1の違いは10倍または10分の1となります)
    13.0 水酸化ナトリウム 0.4%水溶液
    11.5 炭酸ナトリウム 5.0%水溶液
    10.5 メタホウ酸塩ナトリウム
    9.5 ホウ砂 0.1%
    9.0 一般的なアルカリ定着液
    8.0 無水亜硫酸ナトリウム 5.0%水溶液
    7.0 中性 水; 臭化カリウム
    5.2 ホウ酸 0.5%水溶液
    4.2 新鮮な酸性定着液

    現像抑制剤
    現像カブリを防ぐために加えられます。主に臭化カリウム。現像力を抑えることで未露光または極微少に感光しただけのハロゲン化銀が現像されないようにします。 微粒子現像液では特別使われないことが多いですが、フェニドンやハイドロキノンを使ったカブリの出やすい標準・増感現像液では重要で、印画紙現像ではハイライトの描出にかなり影響してきます。

代表的な薬品と用途

    メトール
    Metol; Monomethyl para-aminophenol sulfate; para-Methylaminophenyl sulfate
    フィルム現像液、印画紙現像液にごく一般的に使われる現像主薬。わずかに黄色がかった白色の粉末。計量は比較的し易い。大型写真用品店にて容易に入手可能です。
    メトールと亜硫酸ナトリウムのふたつの薬品だけで微粒子フィルム現像液(D-23など)が作れます。この場合、メトールが単用で現像主薬、亜硫酸ナトリウムがアルカリ剤兼保恒剤です。
    また、ハイドロキノンとの組み合わせ(MQ処方)では過生成といって、現像で酸化したメトールをハイドロキノンが還元することで現像力を増大する効果を得られます。
    経皮で蓄積されると毒性に過敏になることがあります(治らないそうです)。くれぐれもご注意を。

    フェニドン
    Phenidone; 1-Phenyl-3-pyrazolidone; 1-Phenyl-3-pyrazilidinone
    フィルム現像液、印画紙現像液にごく一般的に使われる現像主薬で、「フェニドン」「ピラゾン」などの名称で写真用品店で容易に入手可能です。
    メトールの1/10の量で同程度の処理能力がありますが、メトールがそれ単体でそれなりの現像力があるのに対して、フェニドンはハイドロキノンなどとの組み合わせ(PQ処方)でないと力を発揮できません。しかし、PQの方がMQより一般的に感度が得やすく強力と言えます。
    冷たい水には溶けませんが、高温のお湯には溶けます。アルカリ性、酸性それぞれの溶液には溶けやすい。
    通常は極少量しか使わないため計量が困難。 アルコールに適当な量(例えば1%)を溶いて計量するなどの工夫が必要かも知れません。 入手が可能なら、アルコールではなくプロピレングリコールを使えば保存も利きます。
    また、研和(倍散)という手もあるそうです。例えば5gのフェニドンと95gの無水亜硫酸ナトリウムを粉末の状態で十分に混ぜて保存します。この場合、混合済みの粉末1gには0.05gのフェニドンが含まれるというわけ。一般に無水亜硫酸ナトリウムは数十から100gという多量が使われますので、0.95gは無視しても全く問題なし。

    ハイドロキノン
    Hydroquinone; 1,4 Dihydroxybenzene; Para-Dihydeoxybenzene
    ハイドロキノンまたはヒドロキノンの名称で、写真用品店などで容易に入手可能です。白色の結晶で計量は比較的し易い。
    現像主薬としては、ハイドロキノン単用ではあまり能力が発揮できず、一部の温黒調現像液やリス現像、リスプリント用などのやや特殊な用途の処方になり、ほとんどの場合、メトールと組み合わせてMQ現像液、フェニドンと組み合わせてPQ現像液を構成します。

    アスコルビン酸 Ascorbic acid
    イソアスコルビン酸 iso-Ascorbic acid
    アスコルビン酸ナトリウム Sodium Ascorbic acid
    いわゆるビタミンC。環境への影響などを考慮して、近年ハイドロキノンの代わりに使用するという流れが強まりつつあります。
    コダック「XTOL」、富士写「フジドールE」「コレクトールE」イルフォード「イルフォソルS」など市販の薬品で導入済み。 自家調合ではこれからの普及が望まれるところですね。
    役割はハイドロキノンに近く、フェニドン、メトールとの組み合わせで過生成を得ます。 不純物の金属や空気による酸化もあり水溶液での保存性が悪いため、キレート剤を加えるなど処方には工夫が必要です。
    単純にハイドロキノンの代替としても使用できますが、ハイドロキノンがフェニドン等との組み合わせで過生成を得るのに亜硫酸ナトリウムを必要とするのに対し、アスコルビン酸はそうではないため、ハイドロキノンでは出来ない処方も可能です。
    アスコルビン酸とイソアスコルビン酸は同重量で代用可能(pHはちょっと変わると思う)で、 アスコルビン酸ナトリウム1gが0.889gのアスコルビン酸に相当します。

    グリシン Glycin; para-Hydroxyphenyl glycine; para-Hydroxyphenylamino acetic acid
    まれに微粒子フィルム現像液、主に印画紙現像液に用いられます。 水には溶けないがアルカリには容易に溶けるので、調合の際には最後に加えます。
    粉末の状態でも保存があまり利かないので、必要分だけを入手してすぐに使い切るように。逆に保存液を作ってしまった方が保つらしいです。
    あくまでもグリシン(Glycin)で、世間一般で言う食品添加物のグリシン(Glycine)ではないのでご注意。入手の際には「写真用グリシン」と念を押してください。入手も簡単というわけでもなく高価で、扱いもやっかいです。

    ピロカテコール(パイロカテコール)
    1,2-Dihydroxybenzene; Pyrocatechin; Pyrocatechol; ピロカテシン; カテコール
    フィルムではいわゆる染色現像に使われる現像主薬です。印画紙現像では温黒調になります。

    亜硫酸ナトリウム Sodium Sulfite
    白色の結晶で、「無水亜硫酸ナトリウム(Sodium sulfite anhydrous)」などの名称で写真用品店にて容易に入手可能です。 使用量も多いため計量は容易。
    現像主薬が現像や空気などで酸化した場合、亜硫酸ナトリウムがそれを還元して能力を維持させる保恒剤の役割があります。
    また、亜硫酸ナトリウムの水溶液がアルカリ性なので、メトールと亜硫酸ナトリウムだけで現像液を構成できます。銀を溶解する性質があるため、微粒子化(粒子を目立たなくする)目的でも使われます。

    炭酸ナトリウム Sodium Carbonate
    印画紙現像液などではもっとも一般的に使われるアルカリ剤で、写真用品店で容易に入手可能です。白色または無色の結晶。
    1水塩炭酸ナトリウム(monohydrate)が保存性も良く一般的で、処方に無水炭酸ナトリウム(anhydrous)が記載されていた場合は1.17倍の1水塩炭酸ナトリウムで置き換えます(もちろん逆も可)。 このサイトでは全て1水塩で表記しました。
    アルカリ剤としては強めなためフィルム現像液ではごくわずかしか使いませんが、印画紙現像液ではかなりの量を使います。

    炭酸カリウム Potassium Carbonate
    白色の粉末で、炭酸ナトリウムと同様のアルカリ剤。炭酸ナトリウムより溶けやすいので、濃縮保存タイプの現像液によく使われます。印画紙現像液に使うと温黒調に傾きます。

    メタホウ酸ナトリウム・ホウ砂(硼砂) Borax; Sodium metaborate
    一般的なアルカリ剤として微粒子現像液などに使われます。写真用品店やドラッグストアなどで容易に入手可能ですが、同じようでいて種類があるので若干の注意が必要。

    重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム) Sodium Bicarbonate(Sodium Hydrogen Carbonate)
    いわゆるベーキングソーダ、重曹。近所のスーパーで買えます。穏やかなアルカリ剤。重炭酸カリウムに代用出来る。

    塩化ナトリウム Sodium Chloride
    いわゆる食塩。近所のスーパーで買えます。pH緩衝や穏やかな現像抑制剤として微粒子現像液に加えられることがあります(食塩にはヨウ素が含まれている事が多いからだと思いますが、日本の精製塩はめちゃめちゃ純度が高いから、ちょっと疑問です)。

    水酸化ナトリウム Sodium Hydroxide
    強力なアルカリ剤。薬局でしか手に入らないハズ。非常に危険なのでやめた方がイイです。

    ホウ酸(硼酸); Boric Acid; Hydrogen borate
    水溶液が弱酸性のため、ホウ砂(硼砂)と組み合わせてpH緩衝に使われる。両者を組み合わせてpHのバランスをとることで、希釈してもpHが変化しにくくなる。 一般的に無色の結晶で、写真用品店やドラッグストアなどで容易に入手可能。

    重亜硫酸ナトリウム Sodium Bisulfite
    メタ重亜硫酸ナトリウム Sodium Metabisulfite, Sodium Pyrosulfite
    定着液の酸性化に使われる他、フェニドンやピロ(パイロ)を使った2液保存の現像液などで現像主薬の酸化防止として使われることがあります。
    実用上はどちらでも同じ重量で置換え可ですが、入手しやすいのはSodium Metabisulfiteの方だと思います。水に溶かすと亜硫酸ガスを発生するので換気の良い所で使用してね。

    メタ重亜硫酸カリウム Potassium Metabisulfite
    実用上は、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムらと相互に代用が可能です。

    臭化カリウム(ブロムカリ); Potassium bromide
    カブリ防止剤、現像抑制剤として一般的に使われます。写真用品店で容易に入手可能。白色の結晶状顆粒または粉末。
    印画紙現像液に使うと温黒調に傾きます。

    ベンゾトリアゾール; Benzotriazole
    無色結晶または白色の粉末。カブリ防止剤、現像抑制剤として使われます。
    現像抑制剤としては臭化カリウムが一般的ですが、印画紙現像液ではやや温黒調になるため、冷黒調を得るために使用する場合があります。
    臭化カリウムを置き換える場合、1gの臭化カリウムに対して0.2gのベンゾトリアゾールの割合です。

    チオ硫酸ナトリウム; Sodium thiosulfate; Hypo
    白色半透明で大きめな結晶、粉末。定着液の主剤で、いわゆるハイポと呼ばれるものです。写真用品店で容易に入手可能。

    チオ硫酸アンモニウム; Ammonium thiosulfate
    迅速定着液の主剤です。

    酢酸; Acetic acid
    停止液や定着液に使う酸性の液体。臭います(笑)。写真用品店で容易に入手可能です。

    カリ明礬; Potassium alum, dodecahydrate; ミョウバン
    白色半透明の結晶状。定着液などで硬膜化剤として使われます。写真用品店で入手可能です。

    フェリシアン化カリウム; Potassium Ferricyanide; 赤血塩
    赤色の結晶。ブリーチ剤、減力剤に使われます。写真用品店で入手可能です。

    トリエタノールアミン; triethanolamine
    通称”TEA”。Patrick Gainer氏がPC-TEAをはじめとする現像液処方の溶剤とした事で注目を集めている有機塩基。
    水分をほとんど含まないので溶解した薬品が酸化せず、非常に保存性の高い1液の保存液を作れます。また、水溶液はアルカリ性となるので、他のアルカリ剤を用いずに現像液を処方できます。 融点が高く、室温だと粘性があり扱いにくいですが、熱すれば容易に計量できます。

    ; water
    日本くらい水道水が優秀な国は他にないと思いますが、古い建物の配管などでは不純物が混ざりやすいです。やはり写真薬品の溶解には最低限、充分に煮沸したうえで不純物を沈殿させた上澄みを、汲み置いて使用するのが望ましいです。 ほとんどは平気だと思いますが、アスコルビン酸を使った処方など、場合によっては不純物に敏感なのもあるからね、念のため。
    理想は蒸留水で、欧米の人たちは当たり前のように蒸留水を使え、なんていいますが、日本ではなまじ水道水が飲めちゃうもんだから、近所のスーパーで安く売ってるって事がありませんよね。
    薬局で精製水、カー用品店でバッテリー補充液など買えますが、これもちょっと高いですね。ここぞと言うときしかボクは使いません。 そのかわり、ポット型浄水器(ブリタ)で濾過した水を大部分で使用しています。
    間違ってもアルカリイオン水とかミネラルウォーターとか使ってはダメです。 家庭用浄水器が付いてる場合、ミネラル分を補給するタイプかどうか確認してね。 おいしい水が出来ますってヤツは、要するに不純物を混ぜてるわけだから、飲むには良いけど写真薬品にはマイナスです。
    ポリタンクかなにか用意して、常に数リットルの煮沸済みの水を備蓄するように心がけましょう。
    災害時にも必ず役立つよ、きっと。

薬品の溶解について ~ 溶解する順番には一定の決まりがあります

基本的に、処方に書かれている薬品は「処方の順番」に溶解してきます。
例えば下記の例ですと・・・。

    Kodak D-72 保存液1リットル
    水 (50℃) 750 ml
    メトール 3.0 g
    無水亜硫酸ナトリウム 45 g
    ハイドロキノン 12.0 g
    1水塩炭酸ナトリウム 80 g
    臭化カリウム 2.0 g
    水を加えて総量 1000 ml

まず温水を用意します。水は水道水を暖めてもまぁ良いですけど、理想は蒸留水。 でも日本の水道水の質からしてそこまでは必要なく、あらかじめ数分にわたり煮沸したものを取り置いて、不純物が沈殿してから上澄みをくみ取ってポリタンクなどに保存しておきます。
それを暖めて使いま~す。
温度が50℃となっていますが、たいていの場合がこれくらい。 やや低めでも充分溶かせる場合は40℃という指定もあります。
この処方では 750ml ですね。 最後に仕上げる量より少ないのは、言うまでもなく薬品を溶かしていくと量が増えるからです。 アホでも分かりますな。

ボクがこれまでに目にした日本の本とかホームページとかだと、基本通り処方の順番に従うと言うことで、まずはメトールを溶かすことになります。 多分、多くの人がそうしているのではないかと思いますが・・・。
が、ここにイキナリ落とし穴があります。
いろいろな処方を観ると分かりますが、無水亜硫酸ナトリウムを代表とする「保恒剤」は常に最初の方に書かれていますよね。 それが何故かと考えればおわかりのように、保存液を作っている間に薬品が酸化するのを防ぐため、先に保恒剤を溶かすよう処方が書かれているのです。
ところが、メトールは常に保恒剤より先に書かれます。 これは先に保恒剤をたっぷり溶かしてしまうとメトールが溶けないからです。 アルカリ性だと溶けないんですね。 しかし、メトールは酸化して欲しくない代表です。なにしろ現像主薬ですから。 しかも、そもそもが温水に入れただけで簡単に溶ける薬品ではないので攪拌しなくてはなりません。 これではわざわざ進んで酸化させているようなものです。
そこで、まず最初にひとつまみ程の無水亜硫酸ナトリウムを溶かし、それからメトールを投入して攪拌・溶解します。これがホント。
実際には10gやそこらの無水亜硫酸ナトリウムを先に投入しても、メトール数グラムなんて余裕で溶けます。
この「最初の無水亜硫酸ナトリウムひとつまみ」は覚えておきたいコツです。

概して処方の順番は、保恒剤、現像主薬、アルカリ剤、抑制剤になります。
メトールが最初に書かれている理由は保恒剤の後だと溶けにくいと言う物でしたが、他にはpHによって溶けやすい溶けにくいがある薬品が適切な順番に収まっている事があります。 上の処方例にはありませんが、フェニドンやグリシンが処方の後半に出てくるのはこうした理由ですね。アルカリ剤の後に書かれることがほとんどです。
また、当然ながら後になるほど溶液は濃くなっていて溶けにくくなります。 ハイドロキノンはアルカリ剤の前、臭化カリウムは簡単に溶けるので最後でイイや、というところでしょう、きっと。
というわけで、処方の順番にはちゃんと意味があります。処方順に溶かしていくというのは守らなくてはいけないルールなんですね。

さて、メトールを投入したら、完全に溶けたのを確認する、つまり目視で溶液中に固体が見えなくなるまで攪拌します。穏やかにね。
全て溶けたと判断したら、次に無水亜硫酸ナトリウムを投入します。 一度にドドドッと入れてもまぁ、平気は平気なんですが・・・市販の調合済み薬品で混ざってるヤツを一気に投入すると、溶解するのがほとんど困難という事になっちゃいますが、自家調合のように分けて作業を進めている場合にはわりと平気なんです・・・とはいえ、やっぱり溶かすのが大変になってくるので攪拌しながら少しずつの方が良いです。
それ以降も同様に、先に投入した薬品が完全に溶けたな、と判断してから次へ進みます。

室温が低かったり、あるいはチンタラ作業している場合、処方によっては最後の方でなかなか溶けず、結晶やら粉末状の物やらが溶剤の中でくるくるくるくるいつまでも回っている事がありますよね。 たいていの場合、溶液の温度が下がり過ぎてしまったからです。
そういう時は、熱いお湯を入れた大きな容器に作業している容器を浮かべて、やんわりと暖めながら攪拌します。 ちゃんと処方通りに計量して順番も守っていればちゃんと溶けますので、焦ってはイケマセン。
それでもどうしても最後の最後にくるくる物質が残ってしまったら・・・無視しちゃいましょう(きっぱり)。
いつまでも攪拌して酸化させてもしょうがありません。 それに、だいたいからして少々の結晶が残ったってどうってこと無いんです。 なんの影響もありません。計量誤差より遙かに小さな問題です。気にしない気にしない。
それでもやっぱり見た目で気になるので、保存瓶に移す際に濾過しちゃいましょう。 コーヒー用の紙フィルターで充分です。 薬品に混ざっていたり、作業中に入ってしまった埃や塵なんかの不純物を取り除く目的で、ボクは必ず濾過してます。

全部溶かしたら、最後に水を加えて溶液の全体量が処方通り(多くの場合1リットル)になるよう調整します。 お湯ではなく冷水を使うことが多いですね、次は保存ですから、暖かいままだとポリ製の保存瓶が変形してしまいますからね。
暖かいうちにポリ瓶に入れる場合は、冷水を張った大きめの容器にポリ瓶を入れた状態で注いでいきます。 中が暖かくても外側が冷たいのでチャラになります。最初はポリ瓶がプカプカ浮いてますので、途中でひっくり返さないようにね。

どうにも溶けないヤツ
困ったことに、よく使われる薬品の中にもなかなか溶けないヤツが居ます。 それがフェニドン。 溶けにくい上に細かいパウダー状で、容器の縁にくっついたり溶剤の中でダマになってプカプカ浮かんだり、始末に困ります。
その上、通常使用されるフェニドンの量はごくごくわずか。 数グラムなんて量はまず要りません。コンマ数グラムなんてのが当たり前のように出てきます。 秤の分解能が 0.1g だとすると、誤差を考えると計量不可能ですね。
そこで、次のような水溶液をあらかじめ作っておきます。

    水 (50℃) 750ml
    重亜硫酸ナトリウム 6g
    フェニドン 2g
    冷水を加えて総量 1000ml

日本の本やホームページで「フェニドンはアルコールに溶かしてから」というのをよく見かけますが、そのパターンですと保存性が皆無ですので、実際の使用量だけを正確に計量する(困難ですよね)か、余分に作って残った分(ほとんどが余剰になるはずですが)を破棄するかしかありません。
上の水溶液なら短期間とはいえいくらかの保存性がありますのでオススメです。
1000ml 中に 2g は 0.2%水溶液と言うことになります。 従いまして、処方に「フェニドン 0.2g」とあったらこの水溶液を 100ml となります。
2g は分解能 0.1g の秤でもそこそこ正確に計れますし、液体の計量は 20ml くらいは充分正確にいけますのでかなり細かい単位まで正確に計れることになります。
注意しなくてはイケナイのは、フェニドン水溶液 100ml分の余裕が総量に無くてはイケナイという点。 普通、処方通りに進めていくと最後に100mlやそこらは余裕がありますので問題になりませんが、フェニドンだけでなく臭化カリウムやベンゾトリアゾールなども水溶液で、と甘い計画を立てていると最後に1リットルを超えてしまったり。いずれも使用量が極端に少ないことがあるので水溶液が便利なのです。 特にベンゾトリアゾールはほとんどの場合に水溶液となります。
もちろん、フェニドンの量が多い場合には当然です。
そこで、それを見越してスタート時点での温水の量を減らして置かなくてはなりません。 減らしても、ほとんどのケースで問題なく溶解出来ますが、処方を読んであらかじめ計画を立てましょう。 また、臭化カリウムなどは濃いめの水溶液(10%程度)とすれば良いでしょう。

保存性を考えると
トリエタノールアミンを入手可能なら、フェニドンの溶解にはこちらがオススメです。 ボクはトリエタノールアミン100mlに5gのフェニドン(5%)を溶解してありますが、この保存液は容易に酸化せず無駄がありません。
また、プロピレングリコールかエチレングリコール(ラジエター不凍液)が入手可能なら、保存性からも一考に値します。


フィルム現像処方の基礎 ~ 大まかな構成と要素

フィルム現像液の基本的な話は別のページにも書きましたが、ここでは処方的な事を軽くおさらいしたいと思います。

フィルム現像液を構成する薬品は、大きく分けて4つあります。
ひとつは現像主薬で、これが感光したハロゲン化銀を銀粒子に還元します。
次が保恒剤、現像液が酸化するのを防ぎ、現像力を維持するために加えられます。
次にアルカリ剤で、現像が進行するにはアルカリ性である事が必要なために加えられます。
最後が現像抑制剤で、現像を穏やかにしてコントラストを抑えたり、未露光のハロゲン化銀が現像されるのを防ぎます。つまりカブリ防止剤というわけです。

非常に単純なフィルム現像処方の例

    Kodak D-23 保存液1リットル
    水 (50℃) 750 ml
    メトール 7.5 g
    無水亜硫酸ナトリウム 100 g
    冷水を加えて総量 1000 ml

メトールが現像主薬で、無水亜硫酸ナトリウムがアルカリ剤と保恒剤を兼ねています。現像主薬がメトールだけなのでそれほど現像力が高くなく、現像抑制剤は省かれています。
水に2種類の薬品を溶かしただけ、という単純さですが、微粒子現像液の代表的な処方です。現像液というのはこれくらい単純な作りでも機能するわけです。

    現像力
    現像力は現像主薬の種類、量などで変わります。多いほど現像力は強くなり、少ないと弱くなります。
    現像力はアルカリ性に傾くほど強く、酸性によるほど弱くなります。

    コントラスト
    コントラストを決めるのは基本的に現像量ですが、現像主薬の種類にも性格があります。
    フェニドン単用の現像液では疲労したフェニドンが次の現像を妨げるためにコントラストが上がらず超軟調になります。
    メトール単用の現像液でも同様の理由でコントラストが上がりませんがフェニドンほどではなく、通常の現像には困りません。ただし高コントラストとまでは到底行きません。
    ハイドロキノン単用のフィルム現像液というのは一般的ではありませんが、メトールと組み合わせるとメトールの再生を行うため高い現像力を発揮します。これをMQ処方、フェニドンとハイドロキノンを組み合わせた物をPQ処方と言います。PQ処方の方がMQ処方より一般的に強力です。 これはハイドロキノンによる再生がフェニドンにおいてより急速に行われるからです。
    したがって、高いコントラスト、高いネガ濃度を得るには単用処方よりもMQまたはPQ処方が適しています。

    フィルム感度
    フィルムのパッケージ書かれているISO感度などという物は参考程度なのはご存じの通りですが、現像液の処方によって得られる感度に違いがあります。
    そもそも現像力の低いフェニドン単用ではISO感度より2段以上低い感度しか得られません。 メトール単用の現像液でISO感度より1段低い程度というのが相場です。
    MQ現像液ではメトール単用よりごくわずかに感度が得られるかも知れませんが、適切なコントラストの範囲でと考えるとあまり期待は出来ません。
    高い感度を得るには、少ない露光量のハロゲン化銀でも還元しやすいフェニドンにハイドロキノンを組み合わせたPQ処方が向いています。 これはフェニドンの方がメトールより吸着力が高いためです。
    また、高い感度を得るためには意外かもしれませんが現像液の希釈率を上げるのが効果的です。 これはコントラストを上げないようにする事で、ハイライト濃度を低く抑えたままシャドウ部分の現像を出来るだけ行うというコンセプトによります。そのために、局所的かつ一時的に疲弊しやすい現像処方(あるいは希釈率)を用い、攪拌を控えた長時間現像を行います。
    現像液の現像力が高いイコール高いフィルム感度が得られる、ではありません。

    粒状性
    フィルム現像をやり始めて最初に気にするのは粒状性に関してではないかと思いますが、微粒子の基本になるのは元々のフィルムの粒状性です。 微粒子現像液で現像したISO400クラスのネガは、どうあがいても標準現像液で現像したISO100クラスのネガに敵いません。 現像液は魔法の液体ではありませんから、微粒子をあくまでも求めるなら少しでも粒状性の高いフィルムを使うのが本筋です。 一般に低い感度のフィルムほど粒子が細かく、トラディショナルタイプよりTグレインフィルムの方が微粒子です。
    作られた段階での粒子より細かい粒子にすることは出来ませんから、いかに粒子を荒らさないか、というのが微粒子現像のポイントです。 しかし、それは現像量にかなりの部分がかかってきます。 現像過多にしない、というのは処方云々というのとは少し違う話なんですね。
    処方が大いに関わるのは、粒子を目立たなくするという部分です。 微粒子現像液の処方を見ると、無水亜硫酸ナトリウムが多量に含まれています。 これはもともと現像液の酸化を防いで現像力を維持するための物なのですが、同時に銀粒子を溶解する作用があるため、微粒子現像の目的で保恒剤としての機能以上に多く加えられています。
    溶かしたからと言って、元々の粒子より細かくなるわけではありませんが、角が落ちて目立たなくなるために粒子が見えにくくなる、つまり見た目として微粒子になるわけです。
    微粒子化のためには無水亜硫酸ナトリウムを多め、と言うのが基本。

    シャープネス
    粒子を溶解して見た目を微粒子化すると、デメリットとして見た目のシャープさが失われます。 見た目のシャープさは微粒子とは関係有りません。 どちらかというと逆で、微粒子なほど見た目は甘い描写になります。

    シャープさを優先するには無水亜硫酸ナトリウムなどの溶解成分を減らすことになります。
    また、現像主薬を減らしてもシャープさを得られます。 これは現像中、特に攪拌と攪拌の間に一時的に現像主薬が疲弊して現像が停滞するからです。 現像力が局所的に失われるとエッジ効果と呼ばれる現象で明暗の輪郭が目立つようになります。
    よく行われる希釈現像というものの一端がここにあります。
    しがって、再生力のある、つまり疲弊しにくいMQ処方、PQ処方よりもメトール単用処方の方がシャープさを得やすくなります。

    カブリの防止
    フィルムを現像すると、本来は現像されないはずの未露光のハロゲン化銀、あるいは極微少な感光量のハロゲン化銀もある程度は現像されてしまいます。 これをカブリと言います。
    カブリを抑えるために加えられるのが臭化カリウムなどの現像抑制剤です。 現像力の低いメトール単用処方ではカブリの発生が少ないため、多くの場合現像抑制剤は使われていません。 ハイドロキノンを使った処方ではややカブリが多くなりますのでほとんどの処方で加えられています。
    現像方法による違いもあり、現像時間が長くなる程カブリが増えますので、必要に応じて量を調整します。

    pH緩衝
    現像液の現像力は溶液のpHによって大きく変わります。 そのため、pHを求められるレベルに維持することは大切です。 現像液にはアルカリ剤が含まれていて、それらの多くはある程度安定したpHを示す物が選ばれています。
    しかし、原液からの希釈率を変えて使うことも多いため、薄めてもpHが変化しにくいための工夫として、pH緩衝という方法がとられます。
    pH緩衝は、安定したアルカリ性を示す薬品と安定した酸性を示す薬品とを組み合わせ、両者のバランスを取ることで行われます。 こうした緩衝済みの溶液は緩衝無しの溶液より、高い濃度でpHが安定しているため、薄めてもpHが変化しにくいのです。
    pH緩衝に使われるアルカリ剤は主にホウ砂で、組み合わされる酸性剤はホウ酸となります。 両者の多い少ないで意図したpHに溶液を設定します。 この両方が含まれている処方は希釈してもpHが変化しにくいと言えます。
    逆に、pH緩衝されていない処方をむやみに希釈するのはあまり良い考えとは言えませんよね。 希釈に使う水のpHなんて誰も意識してないでしょ?


印画紙現像処方の基礎 ~ 大まかな構成と要素

印画紙現像液を構成する物は基本的にフィルム現像液と変わりません。 現像主薬、保恒剤、アルカリ剤、現像抑制剤(カブリ防止剤)です。

非常に単純な印画紙現像処方の例

    Ansco 120 保存液1リットル
    水 (50℃) 750 ml
    メトール 12.3 g
    無水亜硫酸ナトリウム 36 g
    1水塩炭酸ナトリウム 36 g
    臭化カリウム 1.8 g
    水を加えて総量 1000 ml

先にフィルム現像処方の例に挙げたD-23と同様に、メトールのみが現像主薬になっている軟調な(弱めの)現像液です。無水亜硫酸ナトリウムが保恒剤、1水塩炭酸ナトリウムがアルカリ剤で、現像抑制剤として臭化カリウムが使われています。印画紙では、白のヌケの良さが重要ですから、現像抑制剤は欠かせません。

    フィルム現像処方との違い
    大きな違いは、印画紙現像液の方が高い現像力を持っているという点です。 これは、短時間で現像を終わらせるためと、1セッションで広い面積を現像するためと言えます。
    したがって、現像能力が高く疲労しにくいMQ処方が主力となります。
    フィルムと違って印画紙の場合はポジ画像で、なおかつ印画紙の持つダイナミックレンジを目一杯使う、つまり最大濃度までしっかり現像しきること求められます。最大濃度に到達するとそれ以上濃度が上がりませんから、現像過多と言うことにはなりにくいのです。 特にRCペーパーではほぼあり得ません。

    印画紙現像に時間がかかると、現像中にセーフライトによるカブリが発生しますし、印画紙の方がカブリが与える悪影響が大きいわけですから、現像抑制剤は必須です。
    また、現像抑制剤の量はハイライトの描出にかなり影響します。

    現像過多になりにくいと言っても、特にバライタ紙では現像力を抑えることで現像の進行を遅くすることにメリットがあります。 観察現像で現像をうち切るタイミングをつかみやすい事もありますし、印画紙のグレード間を埋めるためのコントラスト調整を現像液で行うからです。
    そうした目的で、軟調現像のために先に上げた Ansco 120 のようなメトール単用の処方もあります。

    また、フィルム現像処方との違いとして、印画紙の場合には粒状性をまったく考慮しなくて良いという面があります。 なにしろこれ以上画像を拡大することはないわけで、人間の肉眼が銀粒子を識別することは不可能です。
    そのため、フィルム現像処方と違って微粒子化のために亜硫酸ナトリウムを使う必要は無く、保恒剤としての意味あいという事になりますが、オープントレーでは空気に触れる面積が広く、またセッション時間も長いですから、空気による酸化は大きな問題であり、結局たくさんの亜硫酸ナトリウムがここでも使われます。
    現像力を上げるためのアルカリ剤には炭酸ナトリウム等が多く使われます。

    粒状性に配慮する必要はありませんが、逆にフィルム現像液では問題にならない銀画像の色調が大きな要素となります。 現像液の性格によって印画紙上の画像の色合いが変化するのです。
    一般にニュートラルトーンと呼ばれる、ほぼ純黒からごくわずかに茶色っぽい黒を基準にして、純黒から青みがかった黒を「冷黒調」「クールトーン」と呼び、茶色がかった色を「温黒調」「ウォームトーン」と呼びます。
    これらは印画紙の特性としても有る物ですが、現像液によって大きく、あるいは微妙に変化します。

    冷黒調を得るには

    臭化カリウムの量を減らす
    臭化カリウムの量を減らしてベンゾトリアゾールを加える

    ようするに、現像抑制剤として、臭化カリウムではなくベンゾトリアゾールを用いることがポイントです。 単に臭化カリウムを使わないという方法では、カブリが発生してしまいます。
    やや硬調に仕上げても冷黒調に・・・見えます。

    ニュートラルトーンを得るには

    臭化カリウムの量とベンゾトリアゾールの量でバランスを取る

    温黒調を得るには

    炭酸ナトリウムの量を減らす
    炭酸ナトリウムではなく炭酸カリウムをアルカリ剤に使う
    臭化カリウムの量を増やす
    露光時間を増やし、現像時間を短くする
    露光時間を増やし、現像液の希釈率を上げる(薄める)
    疲労した現像液を使う(使用済みのを保存しておいて混ぜる)

    炭酸ナトリウムを減らしすぎると現像力が足りず曇ったような締まりの無い画像になってしまいますので、そういう場合は炭酸カリウムで置き換える方法が妥当かと思われます。
    また、現像抑制剤である臭化カリウムの量を増やし過ぎるとハイライトがスカッと抜けやすくなるので、コントラストが上がって見えますし、デリケートなハイライトのトーンが失われやすいです。


処方集
ボクが全部を試したワケじゃないです、さすがに・・・。

掲載の処方は複数のソースにあたりましたが、最終的にはページ下部でもご紹介しているアンチェル著「ダークルームクックブック」にて確認しています。 ソースにより相違があった場合は「ダークルームクックブック」を基準にしました。
掲載にあたり、無水炭酸ナトリウムは1水塩炭酸ナトリウムとして使用量を置き換えています。

Photographers’ Formulary ~ 海外サイトですので送料など結構かかりますが、日本国内で入手経路を持ってない場合は頼りになります。
森本化成 ~ ウェブサイトから直接注文できますし、メールで問い合わせれば試薬の類は取り寄せてくれます。ここで大抵の物が入手出来るはずです。写真薬品の取扱いに前向きな希少なソースなので応援しよう!。

REFERENCE
Stephen G. Anchell 「The Darkroom Cookbook」
「ザ・ダークルームクックブック」。 黒白写真用薬品の自家調合でのバイブル的な一冊で、各薬品の働きや取扱いの注意点、多数の処方、テクニックなど、これ一冊あれば充分という盛りだくさんの内容。
問題は化学薬品の名前を日本語名に置き換えるのが化学オンチにはかなり難しいのと、入手の容易さが向こうとこっちでは違ってるみたいだって点。
このページの作成にあたっての参考文献ナンバーワンです。
自家調合に興味を持たれたら、真っ先に入手しましょう。

Jack’s Photographic and Chemistry Site
Ed Buffaloe’s Unblinking Eye
Chemicalbook.com