f-stopテーブル

プリントを作成するさい、まずはテストとして段階露光によってテストプリントを作成し、適正な露光時間を模索することになります。 通常、3秒や5秒といった刻みで段階露光して、適正と思われる濃度を得る時間を求めますよね。
例えば、3秒、3秒、3秒、3秒、3秒と段階露光していった場合ですと、3秒露光、6秒露光、9秒露光、12秒露光、15秒露光による縞状のテストプリントが出来ます。
ところが、ちょっと考えれば分かることなのですが、3秒露光と6秒露光は3秒の差であると同時に2倍です。しかし6秒露光と9秒露光は同じく3秒の差であるのに1.5倍にしかなりません。
撮影用カメラの絞りやシャッター速度と並べて考えれば分かりやすいですが、露光というのは何秒差かではなく、何倍か、で考えなくてはいけません。同じ3秒差でも、12秒と15秒ではさらに差が少ないわけですし、極端なはなし、60秒と63秒なんてほとんど変わりません。
そこで、本来でしたらば印画紙への露光時間も、撮影と同じように「f-stop」つまり「段」や「○倍」で考えた方が自然なのです。
例えば、10秒という基準の露光時間があったとして、それより露光時間を短くした方がよい、あるいは露光時間を長くした方がよいと考えたとき、5秒を減じて5秒にすると1段マイナス(0.5倍)ですが、5秒増やして15秒としても、1段プラスにはならないわけですよね。 10秒に対して1段プラス、つまり2倍にするには20秒でなくてはならないのですから。
また、基準の露光時間に対して部分的に焼き込みをしたり、部分的に覆い焼きをする場合でも、効果の度合いは秒数ではなく「段」「○倍」に従うことになります。
とある部分を「ちょっと明るくしたいな」という場合、固定された数値で何秒覆うとは考えずに、基準の露光時間からマイナス○段を覆う、あるいはプラス○段を焼き込む、という風に考えます。
以前、ジョン・セクストンが、明らかな違いが出るのは20パーセントの露光時間の差だという様なことをどこかに書いていたのを読んで、実際にやってみたらとても納得した記憶があります。 それ以来ボクは、ちょっとだけ焼き込もうか、ちょっとだけ覆おうか、という時は20パーセントくらいでまずやってみる、というのを習慣にしています。
ところが、これがまた勘違いしやすくて、例えば20秒が基準の露光時間だとすると、20パーセントプラスの焼き込みは20秒掛ける1.2で24秒となる4秒の焼き込み、と考えてもよいですが、20パーセントの覆い焼きは20秒掛ける0.8の16秒ではなく、20秒割る1.2で16.7秒になるよう、3.3秒でなくてはなりません。4秒弱ではなく3秒ちょっとなんです。
もちろん、ボクはテキトーな性格なのでそんな厳密な作業はしませんが、覆い焼きの方が焼き込みよりも秒数が少なくなるというのは理屈からも経験からも知っておくべきポイントです。
ところが、この「○パーセント」というのも実際のところ、写真の世界ではあまり適した考え方ではありません。
なぜなら、20%プラスしたものにさらに20%プラス、さらに20%プラスと加えるのと、最初の数値に60%を加えるのは違いますから、整然とした規則になりにくいのです。
ご参考までに、10秒x1.2×1.2×1.2 = 17.28秒。10秒x1.6 = 16秒です。
しかし、基準値に4分の1段プラスし、さらに4分の1段プラス、さらに4分の1段プラスした値は、基準値にいきなり4分の3段プラスしたものと同じになります。

f-stopで考える
f-stop、「段」というのは、写真をやっている人なら結構馴染みがありますよね。 シャッター速度1段、絞り1段などが、それぞれ倍か2分の1なのはご存じの通り。 撮影時の露出補正では、プラス○段、マイナス○段という言い方をします。
では、シャッター速度125分の1秒を3分の1段速く、つまり3分の1段のマイナス補正をしたら、シャッター速度は何秒になるかご存じでしょうか。
3分の1というのは割り切れないので計算が難しければ、2分の1段でも結構です。 125分の1秒のシャッター速度を2分の1段速くしたら何秒でしょうか。
まるまる1段速くするなら簡単ですよね、倍、時間にすると半分の250分の1秒です。 しかし、125分の1秒の半段アップ、と言われるとなかなか即答できません。
125に1.5を掛けて187.5分の1秒? 違いますよね。

プリント時の露光時間について考えてみます。
例えば15秒の露光時間を基準にして、1段露光量を増やすなら2倍にして30秒です。 これは簡単。
1段露光量を減らすなら2分の1にして7.5秒、これも簡単。
では、3分の1段露光量を増やすには、何秒の露光をすればいいのか。 あるいは、4分の1段露光量を減らすには、何秒の露光をすればいいのか。
マイナス3分の1段するのに、○秒を減じたとしても、同じ○秒を足してもプラス3分の1段にならないことは既にお気づきですよね。
考え方は、撮影と似ています。 カメラのシャッター速度やレンズの絞り値と同じ仕組みなんです。
レンズの絞りで、f1.0から光の量、つまり露光量を半分にしようと思ったら、絞りはf1.4ですよね。さらに半分にするには絞りはf2.0です。
「1」と「2」の間に「1.4」がある。コレが鍵。
この数値の根拠を理解していれば、少なくとも2分の1段単位では簡単に計算できます。 10秒の露光時間を0.5段増やすには、1.4を掛ければいいのです。 逆に0.5段減らすには、1.4で割ればOK。 割り算は暗算だとちょっと難しいですから、先に1を1.4で割った値を求めておき、それを掛けても同じです。 レンズの絞りを思い出して簡単な表でも作っておけば、2分の1段単位は簡単です。
実は、もうちょっと正確には1.4ではなく1.4142なんですけどね。
1.4142×1.4142 = 1.99996164、ほぼ2になるでしょ。
では、3分の1段、4分の1段、5分の1段といった単位での露光時間の調整方法はというと、これはもうその場で計算するのは難しいですから、表を作っておくのがいちばんという事になります。

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もちろん2/4と1/2は同じですし、1と3分の1と3分の1は1段の関係といった規則性がありますので、上記の表を元に単純な計算で使い易い表をみなさん作り直すことが出来ると思います。
これら表で示している「○倍」というのは、先にちょっと触れたシャッター速度の○段というのにも同じように当てはまります。

さて、こうしたf-stop基準の表を使って、いちばん最初に出てきたテストプリントの段階露光時間を考えてみましょう。
3秒とか5秒ずつの段階露光ではそれぞれが均等に増減しないことはもうおわかりかと思います。 5分の1段ずつとか、3分の1段ずつというように、段、つまりf-stopで刻んでいくのが本来は望ましいわけですね。
そこで、例として10秒前後を段階露光する場合の露光時間を表にしてみます。 単純に、10秒に先のテーブルを適用しただけのものです。

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例として、4分の1段刻み、5分の1段刻みのテーブルを作ってみました。 14.1秒や15.2秒なんて、まるめて14秒とか15秒のように簡略化してもかまわないでしょう。
4分の1段刻みでしたらば、5秒、6秒、7秒、8.5秒、10秒、12秒、14秒、17秒、といった並びでもかなり理にかなった範囲で正確と言えるはずです。
これらを参考にして、○秒前後を○分の1段刻み、という、ご自分のプリント環境にあった表を作ってみてはいかがでしょうか。