引き伸ばしプリントの道具

汎用的な道具もありますが、ここでは主に引き伸ばしプリントに使う道具を紹介します。

引伸機の選び方
引伸機は暗室道具の主役です。 新品は結構高価だなぁと感じますけど、価値観から行くとカメラより高くて当たり前でしょうね。
中古だとかなり安いので、プリントを始めるのは昔より簡単になった気がします。
ですが、引伸機は精度が大切なので、あんまり古くてガタが来てそうなのは避けましょう。

引伸機本体はまず、使うフィルムのサイズの上限を決めた方が機種を絞り込みやすいです。35ミリフィルムしか使わないのか、中判以上にもいずれ進出するか、という事ですね。
フィルムサイズだけを見れば大は小を兼ねますので、66判用の本体なら35ミリ、645判、66判が使えます。67判用ならそこまで。その上には69判用、4×5用があります。5×7用や8×10用は国産では無いですね(8×10は普通の家庭には置けないでしょうけど)。
66判と67判とで引伸機の価格がそんなに変わるわけではないので、要は35ミリ専用、67判用、69判用、4×5用の中から選ぶことになります。
とはいえ、35ミリフィルム専用の小型引伸機は(一部舶来高級機を除き)入門用のちゃっちいものなので、ちょっとどうかなぁと思います。ハッキリ言ってやめた方がいいでしょう。
いっぽう、4×5用引伸機はボクが使っているもっとも安い機種でも40万円をゆうに超えますし、大きく重いので、普通に考えると67判まで使えるクラスで選ぶことになるのではないかと思います。
大きなフィルムが使えるモノほど背が高いので、大きなプリントを机の上で出来ることになります。カタログやメーカーのHPでは、台板上でどのサイズまで、という表示がされているはずです。

次に、引伸機のタイプを分類するのに、カラー引伸機、多階調引伸機、モノクロ専用といった分け方がされます。
カラー引伸機は文字通りカラープリントに対応したモノで、投影光の色を内蔵したフィルターで調整出来るようになっています。 将来的にカラープリントもやるならこれ。もちろんモノクロ写真にも使えます。カラーは多階調・モノクロを兼ねる、とでも言いましょうか。
多階調引伸機は、「VCCE」という文字を見かけたりすると思うのですが、多階調印画紙を使う際のフィルター機能を内蔵している機種です。フィルター効果を変えても露光時間があまり変化しない、また号数の調整も細かく出来るという利点があります。
モノクロ専用機というのは、こうした機能を持っていないシンプルなものです。

次に、その光源の種類で「散光式」と「集散光式」の2種類があります(他に「冷光源」というのもありますが一般的ではないです)。 カラー引伸機や多階調引伸機には散光式が多く、集散光式はモノクロ専用機によく使われています。
散光式の方が軟調、集散光式の方が硬調でシャープ、とよく言われますが、シャープかどうかはあまり違わないようです。軟調か硬調かも特定の機種同士を直接比べないと言えないハナシのハズですが、総じて散光式は集散光式に比べて印画紙の号数で1号分程度軟調になるようです。

ここで、いったんハナシを印画紙に向けますが、印画紙には号数というものがあって、どれくらい硬調か(軟調か)という種類があります。 プリント上の真っ白から真っ黒までの幅と、ネガフィルム上の薄い部分と濃い部分の幅との兼ね合いですね。一般的に、2号、3号、4号の3種類が出回っています。
軟調なネガ(ネガ上の濃い部分と薄い部分の差が少ない)を印画紙上で真っ白から真っ黒にするのと、硬調なネガ(ネガ上の濃い部分と薄い部分の差が大きい)を印画紙上で真っ白から真っ黒にするのでは、同じ号数の印画紙ではダメで、前者では数字の大きな号(例えば4号とか)、後者では数字の小さな号(例えば2号とか)が必要になります。
そこでネガの状態にあわせて何種類かの印画紙を用意しておいて、ぴったりくるのをその都度選んでプリントするわけですが、多階調印画紙というのは印画紙に投影する光の色を変えることで、すごく軟調な00号からすごく硬調な5号まで性格を変化させられる便利モノなんです。
その投影する光の色調整を引伸機に内蔵しているのがカラー引伸機や多階調引伸機、というワケです。
モノクロ専用機ではフィルター機能が内蔵されていないので、別途用意したフィルターを取り替えて使います。フィルターは通常、00号から5号までが0.5号刻みで1セットになっています。
このフィルターをレンズの下に付けるのですが、光源の下にフィルターを差し込む便利なポケットがついている機種もあります。

引伸機本体はだいたいそんな感じです。
もちろん、堅牢さとか台板の大きさ、操作性とかがあるわけですが、同クラスのものならドングリの背比べ。操作性などは実際にしばらく使わないとワカラナイと思いますし、分かった頃には馴れてると思います。
ちなみに、ボクが今使っている引伸機「LPL7454」は散光式のモノクロ専用機で、レンズの下にフィルターを付けるタイプ。その前に使っていたのは集散光式の「富士670MF」もモノクロ専用機ですが、フィルターは光源の下に差し込めるようになっています。 切り替えたばかりの頃は戸惑いましたが、しばらくしたらすっかり慣れてしまいました。

引き伸ばしレンズ
焦点距離何ミリ、というのはネガフィルムのフォーマットによって選びます。撮影用レンズで言う標準レンズと同じと考えて結構です。
35ミリフィルムなら50ミリレンズがいわゆる標準レンズですから、引き伸ばしレンズも50ミリという事になります。 66判なら75から80ミリ、といった具合ですね。
長が短を兼ねないこともないですが、長いレンズを使うと印画紙とネガの距離を遠くしないとならないので、台板上でプリント出来るサイズに限度があります。 また、剛性の低い引伸機では距離が長くなると露光中のブレなどもあり画質的にも難しくなると言われます。
レンズの光学性能的には、若干長目のレンズの方が周辺の光量低下や歪曲などを避けられるので良いという事も言えるのですが、良いレンズならそれほど問題にはならないはずです。逆に、解像力でちょっと損をする事にもなります(もっとも、これもそれほど問題にならないですが)。
焦点距離が短いとネガと印画紙の距離が近くなりますので、小さなプリントを中心にやるなら少し長いレンズの方がレンズ下の作業スペース(焼き込みや覆い焼きなど)があっていいと思いますが、最初はやはり、35ミリフィルムには50ミリが無難、長くても75ミリでしょう。

レンズのグレードは大きくわけて2種類。「マトモなヤツ」と「ダメなヤツ」です。
マトモなのは国産ではニコンの「ELニッコール(販売終了してしまいましたが)」と富士の「フジノンEX」の2シリーズ。安い引伸機本体にオマケで付いているようなレンズがダメなヤツの部類です。
レンズ構成として、4群6枚というのが目安だと思っても良いです。

引き伸ばしタイマー
引き伸ばし機のスイッチというのは非常に単純なもので、パチパチと点けたり消したりするだけですが、数秒という露光時間が普通で、テストと本番で同じ露光時間にするわけですから、何秒とかコンマ何秒とかの時間設定が出来る引き伸ばしタイマーは必須だと(ボクは)思います。
また、セーフライトをタイマーに連動させると、印画紙に露光している間はセーフライトが消えて暴露時間が減るなど、とても便利にできています。

フートスイッチ
引き伸ばしタイマーのスイッチを足で押せるようにしたオプションパーツです。
あれば非常に便利ですが、予算に余裕があった時にでも構いません。 慣れると、これが無いことが考えられなくなりますけど、なんでもそうですね。

フォーカススコープ
引き伸ばし時には、ピントを合わせるため投影像を拡大して見ますが、その道具です。
高級品を使うべし、とよく言われますので、予算に余裕があればいいのを買っても宜しいかと思いますが、結構高価なので最初はビビるかも。
ボクはいちばん安い奴をずっと使ってました。 今はいちばん高い奴を使ってます。

イーゼル
印画紙をセットしてずれないように抑えるものです。 4枚羽根と2枚羽根がありまして、4枚羽根の方がいいことは間違いないです。
大は小を兼ねますが程度問題で、小さなプリントに無駄に大きなイーゼルを使っていると非常にやりにくいです。 理想は印画紙のサイズごとにイーゼルも揃える事ですが、イーゼルって結構高価なのでなかなかムズカシイですね。
ボクは現在サンダースの20×24インチ用がメインですが、やはり大きすぎるので四つ切りくらいまでならLPLのユニバーサルイーゼル(1417DX)を使う事もあります。これはオススメできます。

多階調フィルター
多階調のことをマルチグレード、またはバリグレードともいいますが、それら対応印画紙で階調を変化させるためのものです。
多階調ヘッド(カラーヘッドも)を持った引伸機では内蔵されていますので不要です。 また、号数印画紙だけを使う場合にも不要です。
引伸機にフィルターポケットがある場合はそれに入るサイズを買います。 大体は4×5インチとか3インチ角とかになっています。
引伸機にフィルターポケットが無い場合は、レンズの下に付けるホルダーも必要です。 ホルダーとフィルターのセットが富士写真フィルムから発売されています。
フィルターの製品はコダック、富士、イルフォード、オリエンタルなどありますが、富士とオリエンタルは同一らしいです。 イルフォードもあまり富士と変わらないようで、コダックはちょっと結果が違ってくるらしいです。
ボクも詳しいことは知らないのですが、どうせ自分で試し焼きするわけなので大問題ではないと思います。

ストライプテスター
段階露光で露光時間をテストするのにあると便利です。 無くても平気なので予算に合わせて買うかやめるかしましょう。
いろいろなタイプがありますが、ボクのはコマみたいにクルクルまわすタイプ(ハンザ製)で、なかなか気に入ってますが、メーカーが転けてしまって今は入手できないようですね。残念。

現像バット(トレイ)
印画紙を現像するさい、薬品を入れておく四角い皿です。
大は小を兼ねますが、これまた大きすぎても邪魔くさいですから、日常的にプリントするであろうサイズ(おそらく8×10かな)を最低のサイズとして必要数揃えて、大きい方はプリントするであろう最大サイズ用を必要になったときに用意するのがよいと思います。
ピッタリサイズがいいか、ひとまわり大きいのがよいかは人により好みが違うようです。
8×10サイズでしたらピッタリなのが100円ショップで売ってます。 専用のモノには敵いませんが、十分使えます。
枚数は最低でも4枚。5枚あると便利です(ボクは同時に7枚使うことがあります)。

ピンセット
トングとも呼びます。 竹製、プラスチック製、ステンレス製とありますが、どれでも結構。やり始めてから不満があったら違うのに換えればいいでしょう。
ボクは竹製で先端にゴムがついているのを使っています。 これは消耗品ですね。

恒温機
現像バットを載せて温めるヒーターです。 処理温度より室温が高いときは意味がないです(当たり前)。 寒い冬には使えそうですが、部屋ごと暖房する方が理にかなってるのでボクは要らないと思います。
というか、ボクも昔に買ったけど持っているのを忘れてました。
ちなみに処理温度より気温が高い夏場は部屋ごと冷房する。なので暗室にエアコンは必須かな。

スクイーザー・ワイパー
印画紙の乾燥過程で余分な水分・水滴を切るのに使いますが、ボクはオススメしません。

クリップ
印画紙を吊して干すのに使いますが、これは洗濯ばさみで充分です。

フェロタイプ乾燥機・フェロ板・ローラー等
バライタ紙をフェロがけするのに使うが・・・しないでしょう。

ドライマウントプレス機
乾燥時にバライタ紙をボードに圧着し、平らにする機械です。素人はなかなか手が出ませんね。

ファイル・額など
好みに合わせてどうぞ。
マットや額装については別の機会に書こうと思います。