クリエイティブなフォトグラファーに贈る赤外写真入門

(書いたのがしばらく前なのでフィルムの情報が古いです。近日書き直しますけど、赤外フィルムは日本国内でもかなり入手が容易になりましたよ)

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赤外写真
どうやら最近、赤外写真の地位というか捉えられ方がグッと変わってきたような感じです。 というのも、まず、日本でもっとも親しまれていた赤外フィルムであるコニカ赤外750が製造終了となってしまった事。 また、コダックHIE(ハイスピードインフラレッドフィルム)もとうとう終了。 他に赤外フィルムというと、これまではMACOのIR820cというのも日本には入ってきていたのですが、1本が2000円近くするのでなかなか手を出しにくいという面もありましたね。そしてこれも廃盤。

別の方面では、これはフィルムのスチール写真ではないのですが、ビデオカメラに赤外フィルターを付けて盗撮まがいの事をする輩が出てきて、特に夏の海水浴場などでは大問題。報道にもよく取り上げられています。 インターネットで「赤外フィルター」なんていうのを検索すると、出てくるのはビデオカメラ用のフィルターを売るあやしげなサイトばかり。
もうひとつ、デジタルカメラの普及というのもありますね。 先にビデオカメラで赤外撮影というのが問題になってるなんて書きましたが、ビデオやデジタルカメラのセンサーはもともと赤外域に感度があります。 通常の使用では可視光だけを撮影するのですから、そのために赤外域の波長をカットするフィルターを撮影素子の前に取り付けてあります。
これを取り外す改造をしたデジカメを使うと、比較的簡単に赤外写真が撮れてしまいます。 なにしろ、赤外写真では測光が難しいためフィルムでは段階露光などが欠かせませんが、デジカメではその場で結果をみれるために非常に大きなアドバンテージがあるんですね。
なんだか正統派の赤外写真まで肩身が狭くなりそうです。

しかし、そんな事にはめげず、フィルムで赤外写真にチャレンジしてみる事にします。
だいたいからして、デジタルカメラなんぞカメラと言い張ってますが、所詮は電気画像生成機です。なにしろフィルムを入れるところすら無いんですから話になりませんね。
それに、2007年春、イルフォードからSFXフィルムが再発売。 さらに以前はMACO IR820cとして知られていたフィルムも、Efkeブランドで発売される運びになりました。
まだまだ赤外フィルムの入手には困りません。いや、むしろこれからが赤外フィルム写真の時代です。

ところで、赤外写真のテクニックなどを紹介する本やインターネットのサイトでは、フィルムとフィルターの組み合わせごとに、サンプル画像がずらっと並んでいるパターンが多いように思います。
たしかにイメージしやすくていいとは思うのですが、反面、てっきりそれでそう思いこんでしまうという感じがあるように思っています。
たしかに、フィルムとフィルターの組み合わせは大切ですが、なぜそうなのかというのを抜きにして、サンプル画像ばかりを頼りに試行錯誤しても理解はなかなか進まないと考えます。
それに、なんといっても撮影しているのは物体が反射している赤外線です。 撮影する赤外線の量は、同じ場所や同じ時刻でも、季節や天候、太陽との位置関係によって大きく変わります。 サンプル画像と同じフィルムに同じフィルターを使いさえすれば、必ずしも同じような写真が撮れるわけではありませんからね。
そこで、このページでは、なるべく別のアプローチで赤外写真を紹介したいと思います。 要するに、いつものように文字がいっぱい、というわけです。

赤外撮影の仕組み
まず、フィルムには分光感度(Spectral Sensitivity)というものがあります。 これは、そのフィルムが光の波長のどの範囲にどれくらい感度があるか、というのを示しています。
プリズムを通った光が虹のように色分けされて映るのを見た事があると思いますが、光には波長という物があり、波長の長い短いが色の違いになって現れます。 波長によってプリズムを通った時の屈折率(曲がり具合)が違うため、虹模様になるんですね。 波長の短いのは青紫、青、緑と続いて、黄、橙、赤と、だんだん波長が長くなります。
しかし、人間の目に色として見える青や紫よりも短い波長の紫外領域があり、さらにまったく見えない部分がずっとあります。それが紫外線(UV)です。
逆に、色として赤に見えるよりも長い波長の赤外領域もあり、さらにもっと長いと目には見えず、それが赤外線(IR)と呼ばれます。
いわゆる電磁波などと言われる物も含めてみんな波の仲間なわけですが、我々は人間の目で見える範囲を「光」として認識していて、その部分を「可視光」といいます。 可視光の中には色として認識される波長もあり、可視光の外に、波長が短いのが紫外線、波長が長いのが赤外線というわけ。 あとはもう、短い方はX線とか、長い方は遠赤外線とかさまざまですが、みんな電磁波の仲間です。
こうした波長は、一般的にはnm(ナノメートル)という単位であらわされます。 可視光は、もちろん個人差もあるでしょうが、だいたい380nmから始まり、760nmくらいまでと言われています。
このうち、いわゆる赤外写真で対象にしているのは、色としての赤よりも長い波長、目安として720nmかそれを越えるくらいからの、「赤外域」から「近赤外線」にかけてだと思ってください。

もともとフィルムは、感光材料である臭化銀の特性として紫外線域から可視光の青に相当するあたりにまでしか感度がありませんでした。 そこに工夫を重ねて、より波長の長い緑も写せるようになり、さらに長い波長の赤にまで感度を持たせたのが、いわゆる「パンクロマチック」フィルムです。フィルムの名前には「なになにパン」というのが多いですよね。
赤外フィルムは、パンクロマチックよりさらにずっと長い波長、可視光を越えて赤外線にまで感度を持たせたフィルムです。 また、純然たる不可視の赤外線とはいかなくても、分光感度が色としての赤の範囲を超えているものも含めて、赤外写真用フィルムの仲間に分類されます。

sfx左のグラフは、イルフォードSFXフィルムの分光感度曲線で、一般的なモノクロフィルム(パンクロマチックフィルム)との比較を示しています。
普通のモノクロフィルムが650nmあたりで感度を失うのに対して、SFXフィルムでは740nm程度まで感度があります。 740nmでは純然たる赤外領域とは言えないわけですが、それでも普通のフィルムでは写せない領域を撮影できることになりますね。
しかし、ここで注意が必要なのは、どちらのフィルムも紫外線域から感度が始まって、それが途切れずにずっと続いているという事です。
そのまま撮影すると、普通のモノクロフィルムでは380nmくらいから650nmくらいまで、SFXフィルムでは380nmくらいから740nmあたりまで、全波長を通じて写真に写りますから、撮影した全体からすると、その違いである650nm~740nmが占める割合は少なく、さほど違いは出ないと言う事になってしまいます。
それに、色としての可視光はだいたい380nmあたりから720nmを越えたあたりまでと先にも書きました。 いかに赤外域まで感度があっても、380nm~720nmまでのたっぷりの可視光と、720nm~740nmまでのわずかな幅の赤外領域との組み合わせですから、まったく赤外写真的な効果は得られないわけなのです。
実際、イルフォードSFXフィルムはISO200相当の普通のモノクロフィルムとしても使えるフィルムです。

darkskyさて、普通のパンクロマチックフィルムでも、イエローのフィルターを使って撮影すると見かけのコントラストが上がります。 これは、イエローのフィルターが紫外線や青の波長を持つ光を遮断するからで、遮断された部分、つまり被写体の青い部分はネガ上で薄く、プリント上で濃くなります。被写体上の青い部分が、プリント上では濃くなるわけです。
さらに、オレンジのフィルターを使うと、青から緑にかけての波長も遮断されます。 青い空がプリント上で黒く、木々の緑も濃く表現されます。
イエローやオレンジなど、モノクロ写真で頻繁に使われるフィルターは、シャープカットフィルターと呼ばれるもので、別の言い方をすると、「ロングウェーブパスフィルター」です。 「長い波長を通す」フィルターですね。「短い波長は通さない」という事。
波長で言うと、イエロー、いわゆるY2のフィルターはだいたい480nmあたりから下を遮断します。 オレンジのYA3フィルターは560nmあたりから下を遮断。
レッドのフィルターは、580nmとか600nmといったあたりから下を遮断します。 すると青い空は真っ黒、緑の木々も妙に濃くて、なんともおどろおどろしい写真になってきますが、空を黒く表現したいモノクロの風景写真ではわりとよく使われる手法です。
仮にパンクロマチックフィルムの感度が650nmまでだとすると、580nmから下をカットするレッドのフィルターでは、580nm~650nmまでの狭い範囲の波長だけ、つまり、ほとんど「赤」だけを撮影しているわけです。
しかし、それでもまだ、可視光を撮影している事には違いありませんね。

さて、740nmといった、可視光と赤外領域の境目あたりにまで感度のあるフィルムで撮影する場合を考えてみます。
480nmから下をカットするイエローフィルターを使った場合、撮影しているのは480nm~740nmで、ほとんどが可視光です。 580nmから下を遮断するレッドのフィルターを使った場合でも、580nm~740nmまで撮影している中の可視光が580nm~720nmであり、赤外部分はわずかに720nm~740nmまで。
しかし、720nmよりも短い波長を遮断するフィルターを使うとどうでしょう、撮影しているのは720nm~740nmであり、これはもう普通のフィルムでは撮影出来ない範囲ですし、人間の目にはほとんど見えていない波長を撮影している事になるのです。
さらに820nmまで感度のあるフィルムではどうでしょう。780nmより短い波長をカットするフィルターを組み合わせれば、可視光はほぼ完全にブロック出来ます。写真に写るのは、もはや人の目には見えない赤外線だけ。というわけです。

わかりやすく言うと、赤外域まで感度のあるフィルムに、可視光を遮断するフィルターを組み合わせ、赤外域部分だけをフィルムに届ける。これが基本です。

赤外写真のあれこれ
アマチュアのホームページなどであれこれ赤外撮影の記事を読んでいると、生意気を言うようですが、いまひとつ理解していない向きがあるような気がします。
そこで、ちょっと気になる部分を書き出してみます。

● 赤外撮影ではピントの位置を補正しなくてはいけない。

    ピントの位置がずれるのは、光は波長によって屈折率が異なるため、全ての波長が同じ距離に集まるわけではないからです。プリズムを通した光が、七色の虹になりますよね。
    写真用レンズでも当然、この屈折率の差が問題になり、それを色収差と言いますが、可視光部分に関してほとんどのレンズはこの色収差をある程度補正してあります。 その優秀なのがアポクロマートというやつですね。
    しかし普通のレンズはさすがに赤外域の波長までは面倒を見てくれていません。そこで赤外撮影では補正が必要になるわけです。 この補正量はレンズによって違いますので、レンズには補正量を示すマーク、赤外指標が付いています。たいていは赤い印やRの字です(最近のレンズには付いていない事もありますが)。 いったん普通にピントを合わせてから、赤外指標までずらすわけです。
    ただし、屈折率は波長によって異なるわけですから、ひとことで赤外といっても同じ屈折率ではありません。 たとえばコニカのヘキサーというAFカメラには赤外フィルム用にピント位置を修正する機能が付いていましたが、これも自社のコニカ赤外750用と、コダックHIE用の2種類を選ぶようになっていました。 それぞれのフィルムで、赤外域での感度の中心が異なるため、ピントのズレ方も同じではないからです。
    当然、レンズに付いている赤外指標も、あくまでも目安でしかないわけですね。
    とはいえ実際問題、撮影距離が短い場合や絞りが開いていて被写界深度が浅い場合などは補正の必要性が高くなりますが、遠景の場合や、風景写真などで絞り込んでいる場合はさほど問題にならない事の方が多いはずです。
    もし正確にピントを合わせるなら、正確に撮影している波長と補正量を把握しなくてはならないのですが、それはなかなか難しいでしょう。
    特に、色収差の補正が良好な今日的なレンズで、それなりに被写界深度を得られる状況ならば、それほど気にする事もないと思います。 古いレンズと新しいレンズを比べてみると、赤外指標の位置がずいぶんと違うものですが、レンズの進歩と共にこのピント位置補正の必要性というのも変化しているわけですね。

● 赤外写真に写っている被写体は赤外線を出している。

    というのはほとんどハズレです。 もちろん、太陽や電球とか、燃えている火とか、実際に光や赤外線を出しているものも撮影する事がありますが、基本的に、写真は反射光を撮影しているケースがほとんどです。 被写体に光が当たり、反射して、それが目に見える、あるいは写真に写るわけ。
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    それは赤外写真でも同じです。 日中屋外での撮影の場合、写真に写っている赤外線のほとんどは、発生源が太陽です。 太陽が放出している光、可視光や赤外線が被写体に当たり、反射して、それを撮影するわけ。
    日中、太陽が高い位置にある時に空は青く見えますが、赤外写真だとほとんど真っ黒になります。 これは、写真に写っていないから真っ黒なのです。 つまり、青い空はあまり赤外線を反射していない事になります。
    雲は良く赤外線を反射するので白く写ります。空にぽっかりと雲が浮いている様子は、赤外写真の特徴でもありますね。 わずかな薄雲もくっきり写すのは通常のパンクロマチックフィルムではほとんど不可能ですから、赤外写真の大きな楽しさのひとつでしょう。
    こうした遠景の風景写真などでは、空気中の水分による乱反射で「もや」がかかってしまう事が多いですが、赤外写真の場合はその影響を受けにくいので、遠景は可視光撮影よりクッキリと写す事が出来ます。
    また、赤外写真の特徴として、植物の緑の葉が白く明るく写ります。 まるで雪を被ったようにも見えるので、この事をスノー効果なんて言いますが、これは、光合成を行う植物の葉の細胞が赤外線を非常に良く反射するからです。 植物が赤外線を発しているからではありません。当たり前ですが、夜中に木を撮影しても真っ黒でしょう?
    ちなみに、スノー効果の事をウッズ効果とも呼ぶようですが、これは木を意味するウッドとは関係なく、人物の名前に由来するそうです。

● 室内では撮影出来ない。

    というのはケースバイケース。 屋外撮影では撮影している赤外線の出所は太陽だったわけですが、室内照明でも白熱電球はかなりの赤外線を放出していますので撮影可能です。蛍光灯はちょっと厳しいですね。ディープレッドのフィルターなら撮れなくもない程度ですが、赤外っぽさは無いです。
    なお、一般のストロボの光にも赤外線が含まれていますので、ストロボ撮影も出来ます。

● 赤外写真は熱を写している。

    なんてな事をホントに思っている人がいるかどうかわかりませんが、写しているのは赤外線で、それも可視光の延長的な近赤外線です。 たしかに熱を発する物は光も発し、赤外線も発しますが、スパイ映画で見るような熱源探知みたいのと赤外写真はまったく異なります。赤外写真はサーモグラフィではありません。
    また、健康器具や暖房器具で良く耳にする遠赤外線なんていうのも、赤外フィルムの分光感度よりずっと長い波長の話です。

などと、つらつらと書いてみましたが、また何か思いついたら書き足します。
露出の決め方についても赤外写真の難しいポイントではありますが、これは後ほど書く事にします。

赤外フィルム
最初に、肝心のフィルムがどんどん無くなっているような事を書きましたが、まず、たしかに日本製で広く使われていたコニカ赤外750はなくなり、コダックHIEも終了。
しかし、MACOのIR820cも廃盤となりましたが、このフィルムはもともとクロアチアのFOTOKEMIKAというメーカーが作ってMACOが販売していた物で、メーカーは2007年に生産を再開しました。すったもんだあったらしく販売ルートがMACOではなくEfkeのブランドになりましたが、これも入手可能です。
また、FOTOKEMIKAからの供給を受けなくなったMACOも、旧Agfa勢とのタイアップで新たに赤外フィルムをリリースしています
さらに、純然たる赤外フィルムではありませんが、一般的なパンクロマチックフィルムよりずっと近赤外領域に感度があるイルフォードSFXフィルムも、2007年春に復活となりました。Rolleiブランドの商品もRollei Infrared 400Sだけでなく、Rollei Retro 400SやRollei Retro 80Sが750nmくらいまで感度があり、近赤外フィルムとして使えます。
赤外フィルム写真もまだまだ、というのは、こういうわけです。

フィルムの入手先(2012,03)
海外通販を苦にしない方なら、入手は容易です。
国内でも、ILFORD SFXは135も120もヨドバシカメラ等の量販店で普通に売ってます。
Efke IR820やIR820AURA、Rollei INFRARED400なども、「かわうそ商店」さん「みらいフィルムズ」さんなどで購入できますよ。

    コダックHIE(残念ながら販売終了)
    一般に入手可能だった写真用フィルムの中では、もっとも長い波長まで感光し、また感度があるフィルムです。 感度があるために粒子が粗く、アンチハレーション層を持っていないために取り扱いが厄介です。 ただし、アンチハレーション層が無いがためにハイライトが派手に滲む効果が好まれる事もたしかで、いかにも赤外写真っぽい雰囲気を一番持っています。値段はかなり高いです。
    扱いが厄介というのは、まず、カメラへの装填や取り出しは全暗黒に近い状態で行わないと被ってしまう事。 それと、比較的新しい自動巻き上げの135フィルム(35ミリフィルム)カメラで多く使われている、赤外線を使ってフィルム送りを制御する仕組みでも被ってしまう事。
    もうひとつコダックHIEの使い勝手では、アンチハレーション層が無いためにフィルムに当たった光(赤外線)がフィルムを通り抜け、カメラのフィルム圧板(後ろからフィルムを支える板で裏蓋に付いている)に反射して戻ってくる事。 そのため、日付写し込み機構などのための穴が圧板に開いているカメラだと、その部分が写り込んでしまいますし、圧板の表面に突起が並んでいるようなカメラ(普及機に多い)でもそれが写ってしまったりします。
    かなり使うカメラを選ぶフィルムと言えますね。
    とはいえ、長く赤外フィルムの代表格であるために、さまざまなサンプル画像や情報が出回っているのも確かです。 復活を切に望みます。
    efkeir820Efke IR820
    かつてMACO IR820cとして知られていたフィルムです。 そもそもはFOTOKEMIKAが作ってMACOが販売していたのですが、2007年の再生産ではEfkeブランドで発売となりました。 135や120は1本10ドルほどで売られていますし、他にシートフィルムのラインナップもあります。
    (2012年現在)日本国内でも入手可能です。
    イルフォードSFXと同様、パンクロマチックフィルムの分光感度を赤外域まで伸ばしていったかたちで、名前のように820nm程度まで感度があります。 フィルター無しで一般的なモノクロフィルムのような画像を得られますが、その際の公称感度はISO100程度。赤外撮影では当然かなり低くなります。
    135フィルム(35ミリフィルム)では、ケースからの取り出し・カメラへの装填、カメラからの取り出しは全黒で行うように指示されています。シートフィルムはもちろんです。
    120フィルム(ブローニーフィルム)は薄暗いところで、との指示です。
    嬉しいことに、アンチハレーション層を除いた「AURA」の製造・販売も再開されました。こちらは、カメラへの出し入れなど取扱をかなり暗い所で行わないと被ってしまうので要注意です。コダックHIE同様、圧板の映り込みなども注意が必要です。
    Rollei Infrared 400S
    公称ISO感度400で、820nmまで感度があると謳う赤外フィルムで、(2012年現在)日本国内でも容易に入手可能です。
    820nmといっても、730nmを超えてからの感度の落ち込みが激しく、それ以上のフィルターではそれなりの露光時間が必要になってきます。

    20120504

    ILFORD SFX
    何年か前にイルフォードが傾きかけた時にいったん廃盤となったのですが、愛用者の要望に応える形で再度ラインナップされました。
    (2012年現在)日本国内でも容易に入手可能です。
    赤外フィルムの仲間として捉えられますが、実際にはコダックHIEのようなバリバリの赤外フィルムではありません。 通常のパンクロマチックフィルムから赤外域に向けての感度を伸ばしていった形で、720nmにピークがあり、740nmくらいまで感度があります。
    フィルター無しでは一般的なモノクロフィルムとかわらない画像を得られます。 その場合はISO200相当で比較的感度は高いほうだと言えますが、赤外撮影では使える範囲が狭いために撮影感度(のようなもの)は低めです。
    極端な赤外フィルムでは無いので、取り扱いは比較的容易で、一般のモノクロフィルムと変わりません。 せいぜい、薄暗いところでのカメラへの装填や取り出しが推奨されているくらいです。全暗黒は必要有りません。また、フィルム送りを赤外センサーで行うカメラでも使用出来ます。
    フィルター無しからイエロー、オレンジ、レッドといった一般的なモノクロ用フィルターでの撮影から、SC-72くらいのフィルターでの赤外っぽい撮影まで、幅広く1本でこなせるのが魅力ですね。 レッドのフィルターだと、一般のモノクロフィルムはかなりキツイ雰囲気になりがちですが、SFXは自然さをあまり失わないように思います。

    20080906

    740nmから750nmという点では、同様のフィルムにRollei Retoro 400SやRollei Retoro 80Sがあります。

赤外フィルムのあれこれ
赤外フィルムは基本的には一般的なモノクロフィルムの延長にあるわけですが、それでもやや特殊なジャンルには違い有りません。 そのせいか、どうも迷信めいた事がまことしやかに囁かれたりしているようです。
そこで、ちょっと気になる部分を書き出してみます。

● 赤外フィルムをケースから取りだしてカメラに装填したり、カメラから取り出したりというのは、全暗黒で行わなくてはならない。

    というのが良く言われていますが、これはコダックHIEを指しているのだと思います。 コダックHIEは感度が高く分光感度も赤外域に長く伸びている上に、アンチハレーション層が無いため被り易いのです。 特に135フィルムでは、パトローネのフェルト部分が赤外線を通してしまうため、そこから感光してしまいます。アンチハレーション層が無いコダックHIEは一気に広い範囲で被ってしまうのだそうです。
    Efke IR820 AURAもHIE同様、アンチハレーション層がなく、被りやすいフィルムです。120でも端から結構感光してしまいますので、薄暗い所で注意深く扱わないといけません。
    AURAではないEfke IR820でも、135フィルムは全黒での取り扱いをメーカーは指示しています。端の数コマが被ってしまうようです。 とはいえボクの経験では、薄暗いくらいのところでパッパと手際よくやっている分には全く影響ありません。
    イルフォードSFXは純然たる赤外フィルムではありませんし、それほどの感度があるわけではないので、極端に神経質になる事はありません。 ケースやカメラへの出し入れでは、直射日光を避けるくらいの気配りは最低限必要ですが、普通のフィルムでも当たり前の事ですからね。
    カメラへの出し入れに関して言えば、135フィルム(35ミリフィルム)よりも120フィルム(ブローニー)の方が被りにくいのですが、カメラへの装填や取りだしを薄暗いところで行う事を考えると、必ずしも120フィルムの方が扱いやすいとは言いにくいでしょうね。

● カメラは金属製でなくてはならない。

    なんてな事をまことしやかに言う人も居たようですが、どうにも根拠がありません。 プラスチックボディのカメラでも問題ありません。
    一般的にカメラのシャーシや外装に使われているプラスチック素材やABS樹脂素材が、可視光は遮断するけれどそれとさして波長の変わらない近赤外線を透過するわけがありません。 もしカメラの材質が原因で、フィルムが赤外線で被るなら、可視光でも被るはずです。 それはカメラが壊れているか不良品か、あるいはどこかしらの遮光素材の質が悪いオモチャのような物だからであって、ようするに光線漏れでしょう。

● コニカ赤外750では、モノクロ用のオレンジやレッドのフィルターで十分な赤外写真効果が得られたのに、MACOやイルフォードはダメだ。

    何て事を言う人が結構いますが、コニカ赤外750の分光感度曲線を見れば一目瞭然で、たしかにイルフォードSFXよりもずっと赤外域の感度がありますが、それ以前に、このフィルムは500nmを過ぎたあたりでいったん感度が無くなり、その後660nmくらいから赤外域に向けて感度がある設計でした。
    MACO(Efke)IR820やイルフォードSFXフィルムでは、パンクロマチックの全域に感度があるため、可視光をカットするためにかなり番手の高いフィルターが必要です。 しかしコニカ赤外750では可視光部分の上半分にはそもそも感度がないため、一般にYA3と呼ばれるオレンジのフィルター(560nmでのシャープカット)で十分だったのです。レッドのフィルターを使っても結果は同じです。
    むろん、どのフィルムも赤外域にも感度があるわけですから、実際にはオレンジのフィルターであってもフィルター無しであっても、赤外部分も撮影しています。 しかし可視光部分の方がずっと露光量が多いため、赤外写真の要素が相対的に少なくなってしまうのです。
    コダックHIEだとレッドフィルターでもかなりの赤外効果が得られるのは、赤外域に広く感度があるための可視光部分とのバランスと、アンチハレーション層がないためのハレーションによってさらに「赤外っぽく」見えるからです。
    赤外フィルムと、それで赤外効果を得るためのフィルターの組み合わせは、フィルムの分光感度曲線を見れば簡単にわかります。

● 赤外フィルムは使用期限が短い。

    というのは、赤外域にまで感度を伸ばした部分の保存性があまり高くないためだそうです。 長く置いておいた赤外フィルムは、赤外域部分の感度を徐々に失っていくようですね。
    赤外フィルムを買ったらできるだけ早めに使用し、保存する場合は冷蔵や冷凍を心がけましょう。
    ボクの経験では、2年ほど冷蔵庫に入れていたコニカ赤外750で、それほど大きな支障はありませんでしたが、わざわざリスクを負う事もありません。
    イルフォードSFXなどは、とりたてて神経質になる事はないと思います。 常識的なフィルムの保存をしている方なら問題ないでしょう。

● オートフォーカスカメラだと被る。

    なんてな事はありませんよね。 一眼レフカメラや一部のレンジファインダーのAFカメラのオートフォーカスはコントラスト検出式ですので、赤外線とは関係有りません。 また、コンパクトカメラに多いアクティブ式AFは、赤外線を出してその反射を受けることで距離を測りますが、測距している時は撮影していないですし、撮影している時は測距してないのですから被ったりしません。
    もっとも、撮影時にも赤外線を出し続けているカメラがあったとしたらゴメンナサイですが、それでも問題なるような発光量とも思えませんね。だいたいからして、被写体に向けて発光しても、カメラ内部に向けて赤外線を出したりはしないわけですから。

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● 自動巻き上げのカメラだと被る。

    フィルムの巻き上げには、かつてはパーフォレーション(スプロケットホール)をツメで引っかけてその数を数える方法が採られていましたが、現在では赤外線を使ったセンサーでパーフォレーションを数えながら精密にフィルム送りを制御する仕組みが一般的になりました。
    それによってフィルムの装填が非常に簡単になったり、コマ送りが正確になったり、途中で巻き戻したフィルムをまた正確に同じコマまで送ったりする事が出来るようになりましたが、センサーが発する赤外線で赤外フィルムが感光してしまうわけです。
    ただし、これが大きな問題になるのは感度が高く長い波長まで感光するコダックHIEだけではないかと思われます。 イルフォードSFXやコニカ赤外750では発生しない問題ですし、Efke IR820もボクのキヤノンEOS Kiss Liteではまったく影響有りませんでした。。
    また、コダックHIEでも、フレーム全部が感光するような事はなく、パーフォレーション部分から若干フレーム内にかかる程度で、全てのコマが全く使えないと言う事は無いようです。 しかし、被る事は被る。
    現実問題として、カメラによって使っている赤外線の波長や強さが異なるでしょうから、影響を与えるカメラ、影響を受けるフィルムも同じではないはずです。 具体的には、カメラのメーカーに問い合わせてみてもいいでしょうが、赤外フィルムは使えるか、とだけ問い合わせても無駄だろうと思います。 実際、キヤノンは赤外センサーを使っているEOSでは赤外フィルムは使えないと言っています。 しかしEfke IR820とEOS Kissとの組み合わせでは問題がないのです。結局のところ、試してみるしかないでしょうね。
    それと、被りが発生する事と、それが理由で使用できないこととは必ずしも同じではありません。 パーフォレーション部分が若干被ったとしても、肝心の画像部分に影響がなければ、それは問題にならないのです。
    ボク個人の考えでは、全黒やそれに近い暗さのなかで手探りでフィルムを装填する事を考えると、出来るなら自動装填のカメラを使った方が楽だろうと思います。コダックHIEはともかくとして、ですが。

● 赤外フィルムの海外通販は出来ない。

    なんてな事は特別ありません。 赤外フィルムは被りやすいというイメージがありますが、一般のフィルムに比べて被りやすいのは赤外線に対してであって、それは普通にケースに入っていれば守られているわけですから、普通のモノクロフィルムとさして変わりません。 赤外線を強く浴びるとしたらギラギラの直射日光、と言う事になるでしょうが、それは通販などとは関係ありません。
    そして、一般に赤外フィルムは感度が低めですから、空港などの貨物検査で使われるX線の影響は、超高感度フィルムよりもかえって少ないわけです。旅行にも持っていけます。

赤外フィルター
普通、赤外写真に使うフィルターを赤外フィルターと言いますが、よく考えるとちょっと変な言葉です。 実際には、可視光を遮断して赤外線を透過するのですから、可視光フィルターの方がいいような気がしますよね。 だって、紫外線を遮断するフィルターはUVフィルターと呼ばれているのですから。
でもまぁ、しょうがありません。思いついたので書いてみたまでです。

さて、これまでにも書いてきたので、赤外フィルターというのが可視光に相当する波長を遮断するフィルターであることはおわかり頂けているはずです。 それはシャープカットフィルターと呼ばれる部類の物であり、別の言い方ではロングウェーブパスフィルターだとすでに書きました。 特定の波長より短い波長を遮断し、それより長い波長を透過するフィルターです。
したがって、一般的なモノクロ写真で使われるイエローやオレンジ、レッドのフィルターと仕組みは同じ、分類も同じです。 レッドのフィルターの延長線上にあるという感じでしょうか。
そもそも赤外フィルムというのが、可視光の赤方向への感光性を延長した物なのですから、フィルターもそうあって当然ですね。

さて、俗にイエローフィルターと呼ばれているものは、ケンコーやマルミの製品でY2という品番が付いていますが、これが480nmでのシャープカットフィルターである事はすでに書きました。
480nmで、と言っても、そう簡単に断崖絶壁のようなシャープカットが出来るわけではないので、やや斜めの崖になっていて、ちょうど50%透過となる波長を指して、480nmのフィルターとか560nmのシャープカットと呼んでいるわけです。

可視光と呼ばれるのはだいたい700nm台の半ばまでの波長です。 したがって可視光を遮断するには、その辺りの波長に設定されたシャープカットフィルターを使う事になります。
しかし、意外な事に、写真用品屋さんに行っても、普通の円形フィルターでそうした製品が並んでいませんね。 日本の代表的な赤外フィルムだったコニカ赤外750では、オレンジのフィルター(560nmのシャープカットフィルター)でも十分だったせいなのかもしれませんが、馴染みのあるフィルターメーカーが作ってないんですね。
と、書いていたら、ケンコーがデジタル一眼レフ用と称して「PRO1D R72」という丸型のガラスフィルターを発売していました。
ガラスフィルターは使い勝手がよさそうだし、こ、これは!と色めき立ったのですが、1枚1万円以上するので、ボクはたじろぎましたよ。
まぁ、HOYAの製品なども80ドルくらいするので、そんなもんなのかな、とは思いますけど・・・。

irfilterしかし、角のシート状フィルター(富士フイルムから出ています)には、細かく段階分けされたシャープカットフィルターが揃っていて、75x75mmのサイズは1枚1000円くらいで売ってます。
それこそ、紫外線カット用の低い番手から赤外領域まで、20nm刻みで細かく揃っているわけですが、シャープカットフィルターの品番は「SC-XX」となっていて、末尾の数字が波長を示しているので分かりやすいです。 SC-48なら480nm、SC-64なら640nmという具合です。
富士フィルムの商品ラインナップでは、SC-XXの品番はSC-74まであります。 それに続いて、IR-XXという赤外用である事を示す品番に切り替わりますので、赤外フィルターに分類されるものはIR-76からという事になりますね。写真はIR-76ですが、ご覧のように真っ黒です。
同じように波長を2桁の数字で表しているHOYAの製品でも、赤を示す”R”を品番に持ったR-72の次に赤外をあらわす”IR”のIR-76と、赤外フィルターは760nmからという分類です。

ところで、760nm設定のフィルターですと、740nmまでしか感度のないイルフォードSFXのようなフィルムでは撮影可能な波長のほとんどが透過しません。そこで、それより下の物を選ぶ事になります。 赤外フィルターとして売られているものではなく、シャープカットフィルターのSC-70やSC-72と言う事になりますね。
これだと若干の可視光が通りますが、多量ではないので赤外写真効果も結構得られます。 逆に、いくらかの可視光を含めて撮影するなら、目的に合わせてもう少し低い番手のシャープカットフィルターでもいいわけです。
実際のところ、海外ではSC-70からSC-72に相当する「ベリーディープレッドフィルター」が手頃な赤外撮影向けフィルターとして売られています。 HOYAのR-72もそうですし、コダックの品番で言う89Bや88A、イルフォードがSFXフィルム用に販売しているSFXフィルター(715nm)もそうした仲間です。
Ekfe IR820やコダックHIEで、より劇的な赤外効果を得るには、さらに上の番手のフィルターを組み合わせていきます。

さて、これですと、フィルターがシート状の角フィルターですから、通常の使用にはそれに対応したフィルターホルダーが必要です。
お持ちでない方は手に入れましょう。それほど高いモノではないですし、角フィルターは種類が豊富で使いこなしがいがありますから、赤外写真ではなく一般の撮影でも重宝します。 撮影中の交換も簡単。ボクの場合は、円形フィルターよりも角フィルターの方が遙かに便利だと思ってますし、使用頻度も高いですよ。

CIMG1284しかし、やはり円形のフィルターでないと困るというケースも多々あるかと思います。 シートフィルム用のホルダーはかさばりますし、レンジファインダーカメラなどでは使えない事も多いでしょう。
そこで、円形フィルターの枠だけとか、あるいはステップアップリングなどに、丸く切ったシート状のフィルターをはめ込んでしまいます。 ちょっと手間ですが、制作費は案外安いもんです。

実は最近知ったのですが、冒頭にも書いたように昨今は改造ビデオカメラに赤外フィルターをつけて盗撮まがいの事をする輩が多いようで、ビデオカメラ用の小径の赤外フィルターが売られているようですな。

それはさておき、使うフィルターの番手は、フィルムの分光感度と狙う表現との兼ね合いなのでした。
イルフォードSFXやEfke IR820なら、可視光ギリギリで、フィルムの赤外領域の感度を有効に使うために720nmのものが手頃。 より赤外の感度があるフィルムで強い赤外効果を狙うなら、フィルムの分光感度の限界をにらみつつ、番手を上げていく事になります。
番手を上げれば、それだけ長い波長の赤外線だけを撮影する事になるので、表現は変わってきます。 いっぽう、撮影する波長の帯域を狭めていくので、同じ絞りとシャッター速度では露光量が減る、つまり撮影感度は下がっていく事になります。
その辺の兼ね合いは、みなさんの表現意図によりですね。
手持ちのスナップ撮影のために可視光も交えて撮影感度64くらいは確保しつつ、赤外風味を付け加える、なんていう味付けも、フィルターの選択にかかってきます。
くれぐれも、使っているフィルムで撮影出来る波長より高い番手のフィルターを使わないようにね。 エグい赤外写真が撮りたいからといって、イルフォードSFXに800nmのフィルターを組み合わせても写りませんから。 これはもう、分光感度の説明でおわかりですよね。

フィルターの装着
一般的なフィルター撮影だと、フィルターはレンズの前に取り付けます。 一眼レフカメラでは、レンズを通った画像をファインダーで見る事になりますので、当然フィルターを通った画像という事です。
しかし、赤外フィルターでは可視光を遮断しますので、ファインダーはほとんど真っ暗でなにも見えません。 SC-72ですら、明るいところがうっすら見えるくらいのものです。
そこで、まずは構図やピントを決めてから、フィルターを装着してシャッターを切る、という手順になります。
当然の事ながら三脚使用が前提となりますが、実際のところ赤外写真ではシャッター速度がどうしても遅くなりますので、三脚を使う事が多くなりますし、そもそも三脚使用が当たり前の風景写真などでは、少々面倒なだけであまり問題にはなりません。 実際、オレンジやレッドのフィルターだって、シャッターを切る直前に装着しますからね(ボクはね)。

とはいえ、シャッター速度はかなり遅くなりますが、日中屋外などでは手持ちのスナップ撮影もなんとか出来る範囲ではありますので、これもまた見逃せない撮影スタイル。 フィルムとフィルターの組み合わせにもよりますが、絞りf4~5.6くらいで、シャッター速度1/30秒とか1/60秒程度は得られますから、十分可能でしょう。
その点、レンジファインダーカメラですと、都合のいい事にファインダーはTTLではありませんので、撮影レンズの前にフィルターが付いていても平気です。
これは、二眼レフカメラでも同じですね。テイクレンズとビューレンズは別々の光学系ですから。
したがって、レンジファインダーカメラや二眼レフカメラの方が、赤外写真ではなにかと使い勝手がいいという事も言えます。一眼レフよりスローシャッターでの手持ち撮影に強いですし、スナップ撮影にはなお好都合です。

eoskissそれでもやはり一眼レフが良いという場合、フィルターをカメラの中に装着してしまう方法があります。
一眼レフカメラのファインダーに写る像は、レンズを通ってミラーに反射した像です。 撮影するのはミラーが上に上がって通り抜ける像ですから、ミラーとフィルムの間にフィルターを装着すれば、ファインダーはクリアで撮影はフィルター越し、という事が可能です。
一般にシャッターより後ろのフィルム側に付けるのはちょっと難しいと思いますが、シャッターとミラーの間だとなんとか出来なくもありませんね。
右の画像はボクのEOS Kiss Liteです。 フィルター自体がほとんど真っ黒なのでよく見えなくてすみませんが、シャッターの手前にフィルターを装着してあります。
もちろん、シート状のフィルターを切って使います。

tvsこうして取り付けたフィルターの着脱はそう容易ではないと思うので、カメラを1台、赤外撮影用として用意する事になるかもしれませんが、なにせ最近はフィルムカメラの中古は安いですから、一考に値すると思いますよ。

レンズ前にフィルターを付けづらいコンパクトカメラでも、内部にフィルターを装着するのが案外便利です。
左の写真はボクのコンタックスTVSですが、コニカ赤外750でのスナップ撮影用に、オレンジのフィルター(SC-56)がレンズ後部に取り付けてみた状態です。 フィルターをハサミで長方形に切って、テープで留めただけの簡単作業。散歩に出かける前に、ちょっと加工した程度のものです。

測光方法の都合
露出の決め方は後ほど記しますが、フィルターの装着は測光方法の都合も考えなくてはなりません。
例えば、可視光を測光して、それに対してのフィルター係数なりなんなりで露出を決めるアプローチでは、露出計がフィルターの後にあっては働きません。 これがオレンジやレッド程度のフィルターであればフィルター越しでも測光出来ますし、TTL測光でおおむね適正露出になりますが、可視光を遮断する赤外フィルター越しでは、可視光を測光する露出計は働きようがありません。
前述のように一眼レフカメラでミラーの後ろにフィルターを付けるのは、ファインダー像を確保すると共に、内蔵露出計による可視光のTTL測光を可能にする意味もあります。
レンジファインダーカメラでは、レンズにフィルターが付いていてもファインダー像はクリアですが、露出計内蔵のレンジファインダー機でも最近のものはTTLによるシャッター幕面反射測光がほとんどなので、シャッター幕よりも後ろのフィルム面直前にフィルターを装着しないと、内蔵露出計は使えない事になります。
一般にフィルター越しのTTL測光はフィルター係数を考えなくて済むから有り難いと思われ勝ちですが、赤外撮影ではかえって足かせになるケースもあるわけですね。

赤外写真の露出の決め方
いちばん悩ましいのがこのあたりではないかと想像します。
それぞれのフィルムの説明書きにもありますが、撮影するのは主に赤外線であって、可視光ではありません。 しかし、カメラの露出計や、単体の露出計などは、そもそもが可視光を撮影する目的で作られているので、可視光を測りはしても、赤外線は測ってくれません。
そもそも、あまり気にしてる人は少ないのではないかと想像するのですが、露出計の分光感度は緑の波長を頂点とした三角形のような感じで、青や赤もそれほど測ってはいないのです。
可視光においてさえ、露出計の分光感度と一般的なフィルムの分光感度がうまく合ってはいないんですね。 さらにフィルターを使った撮影だと、測光値とフィルムの感度とで、整合性が取れる事はなかなか無いんです。

ですので、イエローやレッドのフィルターを使う時でさえ、露出係数がいくつ、なんて事を言うのはあくまでも目安でしかなく、フィルター撮影では念のために段階露光をする事が重要です。
まして可視光ですらない赤外写真です。 露出計はそれほどアテになりません。
もうひとつ考慮しておきたい事は、赤外写真であろうが通常の可視光写真であろうが、写真はほとんど反射光を撮影していると言う事。 そして赤外写真においては、木々の葉が極端にオーバーに露光されるスノー効果に見られるように、同じ被写体を撮影する場合でも、可視光とはまた異なる反射率を相手にしている事です。
いわゆるスノー効果は、植物の葉が赤外線を非常に良く反射するために見られる現象です。 水面や青空が黒くなることなども、赤外線の反射が可視光とは異なるために起こるものです。 可視光を測光する露出計では、これらを把握する事は出来ません。

とはいえ、なにかしらの目安がなくてはなりませんよね。

露出キメ打ち
いちばん分かりやすく開き直った感じなのは、春から夏の季節で日中屋外だったら絞りいくつでシャッター速度いくつ、というもの。 その季節には、それくらいの近赤外線が出回ってるという目安です。
いわゆるサニーシックスティーンの赤外版みたいなものですね。
所詮は目安ですから、段階露光をしておくべきですし、日中屋外以外ではどうなんだ、という話にもなります。 また、地球上のどのあたりでのデータなのかというのも考慮されるべきです。
ただし、フィルムのメーカーが説明書きに記している目安はたいてい当を得ているので使えます。

    ILFORD SFX
    720nm程度のベリーディープレッドフィルター(SFXフィルター、SC-72など)使用時のメーカーの推奨は、明るい晴天にて絞りf5.6、シャッター速度1/30秒です。
    夏場、晴天順光の東京あたりでは、これでだいたい十分。そこそこの露出で撮れますね。

可視光基準のフィルター係数
もうひとつは、基本的に可視光も近赤外線もその出所の代表は太陽ですから、可視光を露出計で測って、赤外線も同じような比率だろうと期待する方法。
例えば、72番のフィルターを使っている場合、撮影感度はEI12くらい。というような感じ。
残念ながら、可視光と赤外線の量は比例しないので、これもあくまでも目安でしかありません。 したがって重要なカットでは段階露光をするべきですし、光源が太陽でなかったら、別の目安が必要になります。
とはいえボクの経験では、太陽光が光源である日中屋外ではだいたい、だいたいですが当たります。 日中の屋外での撮影なら、十分に実用的な方法です。
具体的に、このフィルムでこの番手のフィルターの場合、撮影感度がどれくらい、というのはテスト撮影を繰り返して求める必要があります。 まずは段階露光をマメにやって、データを蓄積していく事になりますね。
製品のデータシートにも記載されていますし、インターネットなどで調べれば、最初のとっかかりになる情報は結構得られます。 それらを目安にして、段階露光で撮影し、結果から自分なりの撮影感度を決めるといいでしょう。

    ILFORD SFX
    フィルター無しではISO200相当が公称ですが、もう少し感度があるんだろうと思います。
    オールラウンドなフィルムとしてイエローやオレンジなどの一般的なモノクロ用コントラストフィルターも使うと思いますが、赤外っぽさを出すためにディープレッドのフィルター(コダック#29、SC-62など)を使った場合、1と2/3段程度のプラス補正が必要になり、EIで言えば64程度と言う事になります(露出計のISO感度を64に設定するという意味)。
    さらに劇的な効果を得るために、可視光と赤外域の境目付近である720nmのフィルター(SFXフィルター、SC-72など)を使用すると、4段の露出補正がメーカー推奨です。 EIに換算すると12と言う事になります。
    ボクの経験だと、EI10くらいでけっこういけるかな、という感じです。
    Efke IR820
    フィルター無しではISO100相当とされています。とはいえ、実際のところEI64くらいじゃないかなと、思ってます。
    劇的な効果を得るために可視光と赤外域の境目付近である720nmのフィルター(SFXフィルター、SC-72など)を使用すると、ISO100に対して4段の露出補正がメーカー推奨です。 EIに換算すると6と言う事になりますが、晴れた日の日中なら10前後でも十分いけるという話をよく見かけます。
    しかし、ボクの経験ではもっと感度は低いように思えますねぇ。EI3~6ってところじゃないでしょうか。

Rollei Infrared 400S
フィルター無しではISO400相当とされています。EI320くらいでけっこういけちゃうので、感度はあるな、と思います。
可視光と赤外域の境目付近である720nmのフィルター(SFXフィルター、SC-72など)を使用すると、EI25がメーカー推奨ですが、これは無いな、という感じです。
レッドのSC60でEI32くらい、SC64でEI25じゃないでしょうか。ボクの経験ではやはり、SC-72だとEI3~6ってところです。
それ以上の番手のフィルターだとガクンと感度が落ちてしまいます。

ただし、前のページのフィルターの装着についてでも書きましたが、カメラ内蔵の露出計を利用する場合には、フィルターの装着方法から考えておかなくてはなりません。
レンズの前、あるいは直後にフィルターを装着した場合、フィルターが可視光を遮断してしまいますから、TTLによる可視光の測光は出来なくなりますし、カメラ内蔵の露出計はわざわざ赤外域を無視するように出来ているのですから役立たずです。
一眼レフカメラの場合、ミラーの後ろ、フィルムよりにフィルターを装着すれば、フィルム面反射測光によるストロボのダイレクト調光以外は機能します。
レンジファインダーカメラの場合、外部測光なら問題有りませんが、最近の露出計内蔵レンジファインダーカメラはほとんどがTTLでのシャッター幕面反射測光のようですから、これも考慮しなくてはなりません。

赤外撮影ならではの露出補正
TTLか外部のメーターかは問わず、可視光を反射光式で測り、それに対してフィルター係数なりなんなりというアプローチを取る場合、赤外撮影である事を前提にした露出補正という考え方が出来ると思います。
例えば、スノー効果に見られるように赤外域での反射率が高い植物の葉などが画面内の測光範囲にある場合、可視光を基準にした測光結果では植物の葉の部分は露出過多になる傾向が間違いなくあるわけですから、それを見越してマイナス補正するべきでしょう。
逆に、青空が画面内の多くを占める場合には、可視光での測光結果よりも露光が少な目になり、たしかに空が黒っぽく表現されますが、例えば高層ビルなど他の要素がやや露光不足になる傾向が見られます。
そうした傾向は光源(多くの場合太陽)との位置関係や角度によって左右されますが、明らかに可視光よりも赤外域の方が高い反射率でもって自分に向かっていると分かる状況、低い反射率で自分に向かっている状況では、それに応じた露出補正によって、ある程度的確な露光量を得る事が出来るはずですし、経験を重ねれば確度を上げられるアプローチです。

弱いフィルターならTTL測光でも
先に、フィルター使用の場合はTTL測光でも段階露出が重要と書きましたが、分光感度が一般のパンクロマチックフィルムよりも赤外方向に長いフィルムでは、イエローやオレンジといったフィルターの影響が相対的に少なくなるため、TTL測光でも案外それなりの適正露出になったりします。 レッドのフィルターあたりでは、一般のパンクロマチックフィルムよりも少ないフィルター係数で間に合っているようです。
実際、ボクはイルフォードSFXでイエローからレッドをレンズに着けて、TTL測光のAEでバシバシとスナップしますが、概ね適正露出になるばかりか、一般のパンクロマチックフィルムよりやわらかく自然なトーンが得られるのでお気に入りです。
ちなみに、その際の撮影感度(カメラにセットする感度)は160~200にしています。

改造露出計
最後は、実際に赤外線を測ってしまう方法です。
露出計は可視光を測るように作られていると書きましたが、そもそも測光する根幹は古くはセレン光電池であり、Cdsだったりを経て、現在ではほとんどがシリコンフォトダイオードです。
Cdsの分光感度は可視光の真ん中あたりを頂点とした三角形で、通常の撮影には都合が良かったわけですが、赤外線を測るのには向いていません。 しかし、シリコンフォトダイオードはもともと近赤外線域に感度が高いのです。
diode_filterそこで、シリコンフォトダイオードを使った露出計では、ダイオードの上に赤外線を遮断するフィルターを被せて、可視光部分だけを測るように作られています。 先ほどまでに出てきた赤外フィルターとは逆に、短い波長を通して長い波長を遮断するフィルターですね。 デジカメの世界ではローパスフィルターという言葉が使われるようですが、これはショートウェーブパスフィルター(SWPフィルター)と呼びます。
しかし、近紫外線域から近赤外線域まで感度のあるシリコンフォトダイオードを写真撮影用の露出計として使うのですから、実際には可視光部分を透過するタイプのバンドパスフィルター(ある帯域だけを透過するフィルター)と考えるのが妥当でしょう。
左の画像は写真用の露出計ではありませんが、廉価な照度計を分解してみたところです。
電線の先にあるのがフォトダイオードで、黄色と水色の四角いのが、ダイオードの上に被さっていたフィルターです。 黄色はロングウェーブパス、水色はショートウェーブパスのそれぞれフィルターですから、両方を組み合わせる事によって短波長と長波長を除去し、可視光部分を残しているわけですね。 この照度計のフィルターが付いている状態での分光感度曲線は、緑を頂点とした三角形をしています。

それはさておき、という事は、そのフィルターを外してしまい、代わりに撮影に使うのと同じ赤外フィルターを装着すれば、可視光を遮断して赤外線だけを測る事が出来るようになります。 それくらいなら、自分でやれない事もありません。
しかしながら、ボクはセコニックの露出計を普段使ってますのでセコニックの場合ですが、ガラス製のこの小さなフィルターはダイオードの上に接着の様な形で取り付けられていて、これを剥がすにはフィルターを破壊しないとなりません。これはちょっと根性が要りますし、ボク自身は失敗経験すらあります。(そこで上の画像のような廉価な照度計が登場したわけですが)。
ミノルタオートーメーターは改造しやすいという話を聞いたのですが、誰かやった事ある人いたら教えてください。

    考慮すべき点
    シリコンフォトダイオードの上のフィルターを取り外して、赤外フィルターを装着したとしても、かならずしも正確な測光(測赤外線)が出来るわけではありません。 なぜなら、赤外フィルターによって遮断する波長はフィルターの番手によって決まりますので、撮影にも同じフィルターを使えば問題ないのですが、逆に波長の長い方がどこまでなのかという問題がクリアになっていないからです。
    分かりやすく言うと、シリコンフォトダイオードの分光感度が、使用するフィルムの分光感度と一致していないと正確な測光(測赤外線)は出来ないという事です。
    例えば、720nmのフィルターを、露出計側とレンズ側に装着したとします。 この場合、短波長側は720nmで一致しますが、フィルムの分光感度が820nmまでしかないのに、シリコンフォトダイオードの分光感度が1100nmまであったら(実際、シリコンフォトダイオードの感度はもっと上まである場合があります)、820nmから1100nmまでの赤外線の量によって誤差が生じてしまうのです。
    そこで、より正確な改造露出計を作るなら、使用するフィルムの分光感度に合わせて、露出計側の長波長側を制限しなければなりません。 つまり、820nmまでの感度があるフィルムに720nmのフィルターを使って撮影する場合、露出計のシリコンフォトダイオードには、720nmのロングウェーブパスフィルター(シャープカットフィルター)と、820nmのショートウェーブパスフィルターを装着して、720nm~820nmの波長だけを測るべきなのです。
    ただし、ロングウェーブパスフィルター(シャープカットフィルター)は75mm角のシートが1000円くらいで簡単に手に入りますが、ショートウェーブパスフィルターはもっと小さなサイズがウン万円するガラス製の工業用製品です。
    これもちょっと根性が要りますが、やってやれない事はないでしょう。実際、こうした赤外写真用に露出計を改造するサービスもあるんですよね。

さて、露出計を改造したとして、それによって得られる測光値で撮影するには、測光値と実際の絞りやシャッター速度の組み合わせ(EV値)とのすりあわせ、キャリブレーションをしなくてはなりません。
露出計が示す値が、フィルム感度でいうといくつを基準にしているのかはまだ不明だからです。 当たり前ですね、本来基準値にキャリブレーションされているものを改造しちゃったんですから。
そこで、測光して得られた値を記録しながら、実際に段階露光で撮影して、その結果から、露出計がこう言っている時はこれで正解だったから、フィルム感度で言えばISOいくつ相当だった。というのを求める事になります。
これは一度求めてしまえば、あとは普通に撮影感度いくつ、という感じで改造露出計を使えますので、最初のテストは大変ですが後は非常に楽になります。
なお、先ほど赤外写真では可視光とは異なる反射率を相手にしていると書きましたが、そのためどうせなら入射光式ではなく反射光式として使った方が確実です。 もっとも、これは普通の撮影の測光でも反射光式を信奉しているボクの言い分ですけど。

その他もろもろ
さて、大体のところは書いたような気がしますが、まだ足り無そうな部分を少し。

赤外ストロボ撮影
ストロボ光は赤外線を含んでいるので、ストロボ撮影も出来ますよ、と最初の方で書きましたが、赤外ストロボ撮影には二つのパターンがあります。
ひとつは、ごく普通の赤外写真撮影のスタイルに、ストロボを焚くパターン。 言い換えると、レンズに赤外フィルターを装着して、ストロボは普通に白い光を発光。
もうひとつは、レンズに赤外フィルターを付けるかどうかは別として、ストロボの発光部に赤外フィルターを取り付けてしまうパターン。
前者はまぁ、普通と言えば普通ですが、後者の場合、ストロボ光が目立たないという特徴がありますよね。
ストロボ光以外の光源がある場合、つまり可視光でも撮影可能な場合には、レンズに赤外フィルターを付けないと赤外写真になりませんが、真っ暗なところでストロボ光のみで撮影するならば、ストロボの発光部にフィルターを付けるだけで赤外写真になります。
あるいは、可視光部分の露出を少な目にして(つまりシャッター速度を上げて)、ストロボ光による露出の比率を上げても良いわけですね。
ストロボの発光を赤外線域に限定する手法は雑誌や新聞などでも使われていたようですが、少々盗撮的なニュアンスもあって、ちょっと抵抗があるかも知れません。 有名な作品には、映画館で映画を鑑賞している人々、ステージ写真など、通常のストロボを焚けないような場所で撮られたものが多いですね。
以前は専用の発光部を持ったストロボも存在したようですが、今は見かけませんので、赤外フィルターを自分でストロボの発光部に装着するなどの工作が必要です。
ただし、かなり強力なストロボが入り用なのは想像付くと思いますが、それだけにフィルターは消耗品となってしまいます。 そこで、安価な赤外フィルターとして、未露光で現像したリバーサルフィルムで代用するという手法が知られています。
ちなみに、リバーサルフィルムの代用フィルターはもちろん、720nmとか780nmといった生半可なフィルターだと、完全に発光が見えないというまでには至りません。 派手に光が走るわけではありませんが、発光部が赤くポッと光るのが見て取れてしまいます。
もし、ストロボの発光にまったく気付かれない撮影をしたいなら、かなり番手の高いフィルターが必要で、当然強力なストロボを使用し、フィルムはコダックHIEしか無いでしょうね。

より赤外っぽい写真
赤外写真って、イメージとして「赤外写真っぽい」っていうのがありますよね。 コントラストが高くて、空が真っ黒、雲がぽっかり、木々が雪をかぶったように真っ白、ハイライトが滲んでいる、などなど。

これらのうち、ハイライトがぶわわぁっと幻想的に滲んでいるのは、もちろん赤外というのもありますが、多くはコダックHIEの特徴です。 前にも書きましたが、コダックHIEはアンチハレーション層を持っていないため、ハイライトがハレーションを起こして滲んでしまうのです。 それが幻想的な、いかにも赤外っぽい雰囲気を出しているわけです。
あの感じが欲しいなら、やはりコダックHIEを使うべきなんですが、もう入手困難ですね。
EfkeブランドのIR820に、待望のAURAが復活しましたので、こちらを使いましょう!

また、ピントのところでもちょっと触れましたが、色収差の補正が極めて良好なレンズよりも、少しだらしないレンズの方がぼやけて見えて幻想的です。

sfx_sc72_fish何度か書きましたが、赤外写真も可視光写真と同じで、反射光を撮影しているわけです。
そしてその出所は、多くの場合太陽です。 当然、撮影するべき赤外線が豊富な方が、赤外写真っぽくなりますから、冬よりは夏、そしてもちろん日中。 曇よりも晴、ですよね。
そして、やはり順光での撮影です。 同じ晴の日中でも、順光と逆光ではまったく赤外っぽさが違います。 太陽を背にして撮影すると、たくさんの赤外線がモロに反射してくる状態を得られますからね。
特に赤外っぽさが分かりやすい植物のスノー効果は、それほど強烈な赤外フィルムではないイルフォードSFXでも、日中の順光なら素晴らしく派手になります。
空を黒く描写するのも同様です。赤外線が反射してこないから空が黒くなるわけですが、順光の方がグッとそれっぽくなります。 逆に太陽に近い空は白っぽくなってしまいますし、空の地上に近い部分も白っぽくなりますから、これは赤外らくしない。

それらを含め、いかにも赤外っぽい写真にするには、
晴天の日中に、出来るだけ順光に近い位置で撮る。
強烈なハイライトがあるようなシーンを選ぶ。色収差の多い古いレンズも効果的(邪道?)。
スノー効果を得られるケースでは、植物を積極的に画面に取り入れる。針葉樹よりは広葉樹。
順光では空を多く取り入れる。逆に逆光では空を入れない方がいい。 高層ビルなどを見上げたカットなどは都市風景写真や都市スナップの定番ですが、地上に近い空が画面に入らないので、ばっちり黒っぽい空を得られる赤外向きの題材です。 感じのいい雲がある時などは、空を中心にした画作りも逃せないパターンですよね。

プリントは、軟調よりはややコントラスト高めに仕上げた方がそれっぽいですし、ローキーよりはハイキーの方が赤外写真の雰囲気が出ますね。
特にスノー効果が出ているカットではかなりコントラストがきつくなるので、トーンを整えるのにフラッシングなどのプリントテクニックも活用したいところですが、ハイライトはいっそ白く飛ばしてしまった方が雰囲気が出ます。
もうひとつ付け加えると、赤外写真とリスプリントとの相性は最高です。

さてさて、長々と書いてきましたが、こんな能書きはもう結構、という感じではないでしょうか。
晴の日には赤外写真を、もちろん銀塩フィルムで、さっそく楽しんでみましょう。