壊れて沈んだ小舟の写真

暗室を作って銀塩プリントを再開してから2ヶ月くらい経って、すでに100枚くらいプリント作ってる。サイズはみんな8×10だけど、全部FB紙だし、かなりのハイペース。

プリントを作る過程のあれこれ、コントラストを決めたり露光時間を決めたり、いろんな試行錯誤の過程が楽しかったり、あるいは難しかったり、たぶんするんだろうけど、まぁなんか、いろいろぶっ飛ばしてるね。要らない過程は要らないからね。

作りたいものはわかっていて、作り方もわかっているものは簡単だ。

それはさておき、作ってるプリントの題材が偏りすぎている。モノクロ写真ではあまり扱われない、アイドルのステージ写真だったり、生成イメージからの銀塩プリントっていうね。

そもそももう、かなり飽きたから長いブランクに入ってたわけだけど。
同じことやってると、そしてボクの悪い癖だけど、やる時には集中してガーッとやるので新しいことにもすぐ飽きるから、ちょっとひと息ついて、逆戻りしてみることにした。

いかにも、モノクロ写真やろうとすると撮りそうな題材、だわね。モチーフっていうのかな?

活動を再開したので、SNSとかでもモノクロ写真のタグを見たりするんだけど、みんなが撮ってるもの作ってるものは、案外昔から変わらないよね。
長く続けてる人は飽きないほどそれが好きなんだろうし、まわりを見渡せば似たようなものがたくさんあって、なんの特徴も新鮮味もなくても、好きなんだろうなと思う。
新しく始めた人にはそれぞれ新鮮で、やがて定番で、みんな一度は通る道みたいな、そういうのってあるよな。

好きなんだろうし、こういうの、っていう、なんていうの?それぞれにやりたいものがあるわけよな。
やりたいもの、というのはもう少し先の話か。
ひとまず、撮りたいもの、でいいかな。

これが、そんなこと考えながら作ったプリント。
壊れて沈んだ小舟の写真。

壊れて沈んだ小舟の写真、ってものすごく簡略化していうとそういうことで、そうでしかないわけね。

で、その、壊れて沈んだ小舟の写真っていうのは、ボクがまだ若い頃に見たモノクロ写真でとても好きだっだものがあって、それが壊れて沈んだ小舟の写真で、いいなぁ、ボクも壊れて沈んだ小舟の写真を撮りたいな、撮りたいというか、最終的には壊れて沈んだ小舟の写真のプリントを作りたいな、と、思ったわけだね。

だからといって、なにせ出不精なので、壊れて沈んだ小舟を探して水辺を探索したりはしないし、すっかり忘れてしまっていたりもしたのだけれどもね。
他にもそういう題材はある。ああいうのを撮りたいとか、こんな感じのプリントを作りたいっていうのはいくつもある。みんなあるでしょ。

これを撮影したのは2013年の8月だから、ちょうど10年前。
旅行でクラビに行った時、あ、壊れて沈んだ小舟がある、と思って撮ったもの。
別に写真を撮りにいくような旅行ではなくて、ビーチリゾートに遊びに行っただけなんだけど、そういう時に見かけるんだよね、こういうの好きなんだよなっていう写真の題材を。

それから10年、プリントはもちろん、写真撮影すらぜんぜんしてない休止期間だったのだけれど、この写真を撮ってあったことは覚えていて、暗室を作るにあたっても、うまいことプリントできないかなとは考えていた。

ずっと昔、壊れて沈んだ小舟の写真を撮りたいな、プリントを作りたいなと思った時にもし、小舟を探して撮ってプリントしても、たいしたものは作れなかったと思う。
20年くらい前、めっちゃめちゃ写真をやってた時でも、たぶん撮れはしたけどプリントはどうだろうなぁと思う。旅行先で、あら、と思って気軽にパシャっと撮るよりはちゃんと撮ってたろうけど、プリント技法の引き出しは足りてなかった。

これを撮った10年前なら、プリントでの表現の引き出しの多さには自信があったし、かなりイイものを作れていたと思うけど、モチベーションがものすごく低かったので、スナップショット程度に撮っただけでプリントするところまではいかなかったよね。

モノクロ写真は今でも人気があるから、やってる人、始めた人、いろいろいると思うけど、ほとんどの人にはこのプリント、たぶんだけど、作れないと思う。
作り方すらわからんのではなかろうかとさえ思う。

もしかすると、モノクロ写真なのこれ?白黒じゃないじゃん?
というレベルの人が多いのかもしれないし。こんなふうにはならんやろって思う人もいるのかもね(そういう経験をいろいろしてるのでね)。
(なんか白黒写真ばっかりなのはなんでや?っていうハナシはいずれする)

もちろんそもそも、これをいい写真、いいプリントだと思わない人もいるだろうし、むしろ、ほどんどの人がいいと思わないのかもしれないしね。
それはひとそれぞれだから。

ボクはというと、10年前の時点で、けっこうイイプリントは作れてたと思うけど、今回のこのプリントは、ここ最近の、2ヶ月ほどの間に身につけた手法を使ったのでできたって感じ。

やり方自体は10年前にはわかってて、やりかけてはいたっていうものだけど、この2ヶ月で100枚ほどプリントを作ってる中で、なるほど、やり方わかったわ、って感じ。

紆余曲折あってブランクもあって、結果的にものすごく時間はかかったけど、そのおかげで思いついた時にはできなかったであろうプリントを、たまたまいろんな積み重ねがあったおかげで作れたよね。

自分がこれまでに作ったプリントの中でも、かなり気に入っている。

けっこう満足していて、もうちょっと写真やりたいなって思った。