標準現像を決めよう

写真は、被写体・風景、つまりとあるシーンを光というすがたで捉え、フィルム上の銀粒子で画像という形にします。 さらに、ネガフィルム上の画像を印画紙に投影し、最終的にプリントとなります。
その仕組みと、その仕組みゆえに覚えたり考えたりしなくてはならない基本的な事を紹介しながら、このページではフィルムの標準撮影感度と標準現像を決める手順をご紹介します。

明るさ濃さの差=コントラスト
悔しいことに、印画紙上に表現したい暗いところから明るいところまでの差というのは、撮影する被写体の暗さ明るさの差に比べると非常に小さいのです。 実際にボクらが目にする風景では、明るさの差は、1:1000とか1:10000という事すらあります。 しかし印画紙上では1:100とか1:200しかありません。
印画紙の地は白、あるいはアイボリーや薄いベージュなどいろいろありますが、それがもっとも明るい状態ですよね。 印画紙は光ったりはしないので、地の明るさ以上に明るくする事は出来ません。
逆にもっとも暗いのは、その印画紙を目一杯露光して目一杯現像して得られるもっとも濃い黒です。
モノクロ写真のプリントで使えるのはこの間だけなので、それをいかに有効に使うかが大切です。
一番濃い黒から、印画紙の地ではないギリギリ目一杯明るいグレーまで。 だれでもプリントの際には印画紙の号数を変えたり、多階調印画紙ではフィルターを換えたり、ちょっと凝った人なら現像液の希釈率を変えたりして調整しますよね。

そもそも、写真はなにかを撮影して作る物ですから、かならず被写体があります。 被写体の暗さ明るさの差を、最終的に印画紙上の暗さ明るさに移していくわけですが、その間にはネガフィルムが存在します。
なお、明るさの差、濃さの差、といったものを「コントラスト」と呼びます。
差が大きいほどコントラストが高い、差が少ないほどコントラストが低い、というわけです。

ネガフィルムは、その呼び名の通りネガティブ画像、反転画像です。
撮影した被写体の暗いところがネガフィルム上では薄く、被写体の明るいところがネガフィルム上では濃くなります。
プリント時に、そのネガフィルムを透過して印画紙に当たった光の量が多いところは、印画紙上では濃く、少ないところは薄くなりますから、印画紙はポジティブ画像となります。
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このネコは白いネコですから、周囲よりもネコの身体が明るい、つまり光の量が多い事になります。 したがって、撮影後に現像されたネガフィルムは、露光量の多いネコの身体の部分が濃くなり、それに比べて周囲は薄くなります。
このネガフィルムに光を当て、通り抜けた光を印画紙に露光するのがプリント工程ですから、ネガ上で濃いネコの身体の部分はあまり光を通さないため印画紙への露光量は少なく、周囲はネガが薄いので印画紙への露光量は多くなります。
フィルムへの露光も、印画紙への露光も、どちらもネガ画像をつくるものなのですが、ネガをまたネガにするとポジになる、というわけです。

もし、何も撮影していない未露光のフィルムを現像処理すると、フィルムは素ヌケの状態になります。 普通に撮影したフィルムでも、最後まで使わなかったりすると端の方に残っていますよね。
この部分の濃さ(薄さ)は、ネガフィルム上で得られるもっとも薄い状態です。 この濃さを、fb+fと呼び、モノクロ写真をやる上で頻繁に目にすることになりますので覚えておきましょう。
「fb」はフィルムベースの略で、「f」はフォグと言い、現像時に出来る曇のようなものです。現像カブリとも呼ばれます。
いっぽう、ネガフィルム上でもっとも濃いところは、現像した後のフィルムのリーダー部分などを見れば分かるとおり、ほとんど向こうが透けて見えないほど濃く出来ます。
しかし、あまり濃すぎてはプリントに使えないので程度問題で、どれくらいまで濃くていいのか、どの程度は濃くなくてはいけないのかが問題になってきます。

先に書いたように、被写体の明るさの差、つまり被写体のコントラストがネガフィルム上のコントラストに、ネガフィルム上のコントラストがが、印画紙上のコントラストに、それぞれ移し替えられていくわけですから、ネガフィルム上のコントラストは、
被写体のコントラストによって影響される
プリントのコントラストに影響を与える
という2点がまず前提になります。

ネガのコントラストは、被写体のコントラストに影響される他、フィルム現像によって調整することが出来ます。 現像時間が短いとネガのコントラストは低くなり、現像時間を長くするとコントラストが高くなります。

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また、印画紙には異なるコントラストを持たせた「号数」というのもがありますので、ネガのコントラストが同じでも、印画紙の「号数」を変えることでプリントのコントラストは変化します。

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これらの事を考え合わせると、次のような組み合わせで調整出来ることが分かります。

    コントラストの高いネガでも、低い号数の印画紙を使えばプリントは適正になる。
    コントラストの低いネガでも、高い号数の印画紙を使えばプリントは適正になる。
    コントラストの高い被写体でも、低い号数の印画紙を使えばプリントは適正になる。
    コントラストの低い被写体でも、高い号数の印画紙を使えばプリントは適正になる。
    コントラストの高い被写体でも、コントラストの低いフィルム現像を行えば適正になる。
    コントラストの低い被写体でも、コントラストの高いフィルム現像を行えば適正になる。

こうしてみると、どんな状況にも対応できそうです。 またそれが、さまざまな処理をひととおり自分で行うモノクロ写真の面白いところでもあるわけです。
しかし、なんでもかんでも流動的というのでは基準が定まりませんし、あっちを調整、こっちを調整というのは、言ってみればどこかしらの余力を使って帳尻を合わせているわけです。
「余力を持っている」というのは「全力を尽くしている」の反対ですから、実はあれこれ調整しないと結果が出ない状態は、画質的に褒められた物にはなりません。 これまでに、「適正になる」と言っていたのは、別に素晴らしいという意味では全然ありません。とりあえず帳尻が合っているという程度の事です。
そしてもちろん、調整するにしても限度という物があります。
特に、フィルム現像については、ロールフィルムで複数のコマを撮影しているにもかかわらず、被写体のコントラストが違うからとフィルム現像を変えるわけにはいきません。

そこでまず、標準現像というものを定めることになります。

標準の印画紙
では、ネガフィルム上のコントラストはどの程度が適正なのでしょうか。
ネガのコントラストは「被写体に影響され」、「プリントに影響する」わけですから、その両方の都合を鑑みたうえで、フィルム自身の都合も合わせて決めなくてはなりません。

ひとつには、印画紙のコントラストに合うネガのコントラスト、という考え方です。 ネガフィルムの素ヌケ部分であるfb+fを印画紙の最大黒に当てはめて、印画紙のギリギリ白になるネガフィルムの濃さまで、というもの。
先に述べたように、印画紙には異なるコントラストを持つ号数というものがありますから、例えば3号、あるいは2号という風に印画紙側を先に決めてしまえば、それに合うネガフィルムのコントラストが決まります。
また、被写体側にも、一般的な景色や風景が相当するであろう標準的なコントラストというのを設定すれば、その標準被写体を標準印画紙に結びつけるコントラストがネガの標準コントラストで、それを得るのが標準現像である、という風に考えられます。

また、ネガのコントラストを上げる、つまり現像を長くすると、粒子が荒れたり階調が滑らかでなくなるといったデメリットも発生しますので、特に粒状性が問題になる小さなフィルム(35ミリフィルムなど)では、あまりネガのコントラストを上げたくありません。
また、印画紙では、号数紙は一般的に2号から4号が売られていますし、多階調紙でも2が中間という位置づけですので、やはり標準印画紙は2号から3号、35ミリフィルムでは3号、中判や大判では2号、というのが妥当でしょう。


左の図は、富士写真フィルム社の印画紙「フジブロWP」の特性曲線図です。
横軸は相対露光量といって、印画紙に当たった光の量を示しています。 左の方が露光量が少なく、右の方が露光量が多いという図です。
縦軸は現像後の画像の濃度です。
右にいくほど露光量が多いので、現像後の画像は濃くなります。
つまり、写真で言えば、グラフの左の方がハイライト、右の方がシャドウ、ということになりますね。
グラフに3本の線があるのは、2号、3号、4号それぞれを示しているからです。
赤い線で示されている2号が、もっとも角度が緩やかですね。 3号、4号と号数が上がるほど、角度が急になっていきます。 グラフで、角度が急な方がコントラストが高いというわけです。
どの号でも、濃度がもっとも低いところは濃度0、つまり印画紙のもともとの白の状態なのは言うまでもありませんが、もっとも濃くなるところも、濃度2.0のちょっと上あたりで、ほとんど変わりません。
しかし、この真っ白からもっとも濃い黒までを得るために必要な、露光量の幅が異なります。 2号よりも3号、3号よりも4号で、より少ない露光量の差で同じ印画紙の濃度差を得られるわけです。
この様に、印画紙が白から黒までの画像の濃さの幅を出すために要求する露光量の差、つまりネガ上の画像の差というのは、印画紙の都合で決まってきます。
逆に言えば、ネガ上のコントラストの都合で、それに組み合わせる印画紙の号数というのを選べるわけですが、ここではあくまでも、印画紙側でまず標準を定めているわけです。

標準的な被写体
さて、印画紙の号数で標準が決まり、ネガのコントラストをそれに対応させるという段取りですから、ネガのコントラストに「影響を与える」被写体のコントラストを次に標準化しなくてはいけません。
そのためには、実際に撮影する被写体の明るさの差を片っ端から調べて、標準モデルをつくらなくてはなりませんが、有り難いことに、ここに代表的なものがひとつあります。 それが「ゾーンスケール」です。
「ゾーンシステム」という言葉を聞いたことがあるかも知れませんが、これはまさに、今やろうとしている事、すなわち「被写体のコントラスト、ネガのコントラスト、印画紙のコントラストを結びつける」ための考え方、仕組みです。
ここではシステム全体に踏み込むことはしませんが、ゾーンシステムにおける「ゾーン・レンジ」という考え方を拝借します。

    ゾーン 0 測光値-5EV 印画紙では完全な黒。
    ゾーン 1 測光値-4EV 真っ黒よりちょっとだけ明るい黒。質感は見られない。
    ゾーン 2 測光値-3EV 質感はあるけれど、暗くて詳細な事は読みとりにくい。
    ゾーン 3 測光値-2EV 暗い部分だけれどちゃんと詳細が見て取れる。
    ゾーン 4 測光値-1EV 風景や人物写真での標準的な影の部分。
    ゾーン 5 測光値 ±0EV 中間グレー。いわゆる平均反射率18%の部分 。
    ゾーン 6 測光値 +1EV 肌に優しく日が当たっている感じ。日の当たる雪景のシャドウ部。
    ゾーン 7 測光値 +2EV 一般的景色で詳細を識別できるハイライト部分。
    ゾーン 8 測光値 +3EV わずかに質感を保つハイライト部分。
    ゾーン 9 測光値 +4EV 輝く白の表面。質感を伴わないハイライト。
    ゾーン 10 測光値 +5EV 光源。印画紙での完全白。

被写体の明るさ、印画紙上の濃さの様子を、0から10まで11段階の「ゾーン」として分類してあります。 各「ゾーン」は写真用語でなじみ深い「EV」に相当しますので、たいへん使い易くなっています。
これが標準的な被写体のモデルです。
もちろん、これはあくまでも標準モデルですから、実際にはゾーン1に相当する部分は無いとか、ゾーン9ほど明るいところは無いというように、被写体の状態は様々です。
しかし、かなりの確立で適応する、標準であることは間違いありません。

さて、この様に、ゾーンスケールは11段階に分かれていますが、ゾーン0は真っ暗・真っ黒ですし、ゾーン10は真っ白です。 したがって、ゾーン0とゾーン10は濃さの変化を持っておらず、濃さ・明るさの変化があるのはゾーン1からゾーン9までの9段階、つまり9EVです。
この、9EVをもって、「ダイナミックレンジが9EV」である、と言います。
また、ゾーン1は非常に暗くてよくわからない部分ですし、ゾーン9も明るすぎてよくわからない部分です。したがって写真上、質感などを表現できるのはさらに内側のゾーン2からゾーン8までの7段階となり、これを「有効被写体輝度域」が7EVである、と称します。

さて、これ以上踏み込むと、そのままゾーンシステムの解説になってしまいますのでこの辺にして、とりあえず、標準的な被写体のダイナミックレンジは9EV、という事にして、次へ進みましょう。

この部分の話をすると、実際の被写体にはダイナミックレンジが8EVしかなかったとか7EVしか無かったという風にクレームされることがあるのですが、ここで話しているのはあくまでも標準モデルです。実際のダイナミックレンジが標準と異なっていたら、フィルム現像を変えてネガのコントラストを調整するのがゾーンシステムです。
もちろん、ここでは踏み込まず、標準モデルを拝借するに留めます。

テスト用のネガを作る
さて、標準的な被写体のダイナミックレンジを9EVと仮定しました。 次はその9EVのダイナミックレンジが、標準号数の印画紙上に、濃さの変化として過不足無く移せるようにフィルム現像を調整する段階です。
印画紙はここでは2号という事にしておきますね。 多階調印画紙の場合は、言うまでもなく、2号フィルターでプリントするという意味になります。

2号印画紙に9EVのダイナミックレンジが移し替えられるかどうかを調べるのに、いちばん確実な方法は実際にプリントしてみることです。
もし、ダイナミックレンジが9EVである事が明らかに分かっている被写体があるならば、それを撮影してプリントすれば済みますが、なかなかそういうチャンスは得られません。
そこで、少々無味乾燥ではありますが、人工的にダイナミックレンジ9EVを作り出します。

無地の被写体を撮影する
コンクリートの壁、白いタオル、なんでも構いませんが、無地の平面を見つけて、それを画面いっぱいに撮影します。 測光は、カメラ内蔵のTTL露出計であれば、スポット測光、部分測光、または中央重点平均測光で行います。 多分割評価測光は測光値の演算により左右される事があるので避けます。
カメラに露出計が内蔵されていない場合、単体の露出計を使うなら反射光式で無地の被写体だけを測光し、入射光式露出計ではグレーカードを正しくセットして測光・撮影します。 しかし、入射光式露出計でグレーカードを正しく撮影するのは意外と難しく、出来たつもりで全然ダメ、というケースを多く見かけますのでボクはお勧めしません。
単体の反射光式、あるいはレンジファインダーカメラなどで、カメラに内蔵の露出計でもTTL測光ではない場合、対象を画面いっぱいに撮影するため近づきすぎると誤差が生じますので注意してください。
無地の被写体をTTL測光で測光し、測光値通りに撮影すると、そこが先のゾーンスケールでは「ゾーン5」という事になります。
測光値に-1EV補正して撮影すると、そこは1段分暗い「ゾーン4」。
逆に、測光値に+1EVして撮影すると「ゾーン6」です。
この要領で、それぞれのゾーンに相当するグレーを撮影すればよいのですが、まずはフィルムの感度を調べるために、ゾーン1付近をテスト撮影します。
カメラや露出計にセットするフィルム感度は、とりあえず勉強も兼ねてISO感度通りにすれば良いでしょう。
1コマ、未露光のコマをとっておいて、ゾーン1に相当する測光値-4EVの前後を、1/3EV刻み、あるいは1/2刻みで撮影します。

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刻みを1/2にするか1/3にするかは、カメラやレンズの機能の都合によるでしょう。
現像が終わったネガフィルムを見てみます。

ネガのイメージ
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測光値-5EV、つまりゾーン0の部分は真っ暗・真っ黒ですから、ここはネガ上でも素ヌケで構いません。 しかし実際には、この部分もごくわずかに濃度があるのが普通です。
測光値-4EV、つまりゾーン1の部分は、プリント上で真っ黒よりもいくらか薄い黒でなくてはなりませんから、ネガ上では素ヌケではなく、濃度が無くてはなりません。 しかも、ごくごくわずか、では、実用上のゾーン1にはならないことがほとんどです。 そのへんは後ほど検証しますが、この段階でゾーン1のはずの部分もゾーン0の部分とさして変わらない素ヌケに近い状態だとすると、全体として露光不足であったことは明白です。
露光不足というのは、テストの際の測光がまずかったという可能性もありますが、そうで無い場合はフィルムの感度不足です。
ISO400のフィルムを、先ほどのテスト撮影で感度400としてカメラや露出計にセットしていたとすると、実際はそのフィルムの感度は400も無い、という事になってしまいますが、実は、実際にはそうしたケースがほとんどで、通常の使用でISO感度通りの感度が出せるフィルムはほぼ皆無と言っていいのです。 つまり、テスト撮影時にISO感度を基準にした場合、測光値-4EVで十分なゾーン1相当のネガ濃度を得るのは難しいというのが現実です。
それでも、さすがにゾーン2、ゾーン3、と、撮影したゾーンが上に上がるほど、露光量が多いわけですからネガの濃度は濃くなって行きますね。

続いては、このテスト現像の結果を検証します。

テストネガのイメージ
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先ほど作成した、テスト撮影のネガです。
このネガのうち、測光値-4EVのコマが、実際にゾーン1になっているかどうかを確かめます。 ゾーン1は、印画紙上でも「真っ黒よりはすこし薄く、かといって詳細も質感も無い」状態です。 そういうと分かり難いですが、自分の写真表現上、真っ黒ではないけどかなり濃い黒として「使える」濃度、と言う風に考えて結構です。 言い換えると、かなり濃い黒だが真っ黒ではないという意味です。
モノクロ写真の階調というのは、隣り合う階調があって始めて認識される物ですから、ゾーン1の黒よりもさらに黒い黒、つまりゾーン0というのが存在できなくてはなりません。 かといって、ゾーン1が必要以上に明るくても締まりがないだけです。

最短時間最大濃度法
作成したテストネガ、これを「テストストリップ」と呼びますが、実際にこのテストストリップを標準と決めた印画紙にプリントしてみれば、なにより正確に現状を把握することが出来ます。
テスト撮影の際に未露光で残して置いたコマ、つまりfb+fのコマを使って印画紙の最大濃度を得られる最短の露光時間を求め、その露光時間でテストストリップを順にプリントしていきます。
この、素ヌケのコマから露光時間を決める方法を「最短時間最大濃度法」とボクは名付けています。

あとは簡単です。
素ヌケのコマで印画紙上に最大濃度を得られる最短の露光時間で、測光値-4EVのゾーン1のコマが実際に印画紙上でゾーン1になればいいわけですね。

フィルムの実感度
しかし、先にも書いたように、ISO感度通りの設定でテストすると、なかなか測光値-4EVのコマはゾーン1濃度を得られません。 おそらく、ゾーン1のコマをプリントすると真っ黒と見分けが付かない状態では無いでしょうか。
この場合、フィルム感度はテスト撮影に使ったISO感度ほどは無かった、という事になります。
そこで次に、それよりも濃度の高いコマを使ってプリントしてみます。 露光時間はもちろん同じです。
測光値-3 2/3EVのコマ、測光値-3 1/3EVのコマ、測光値-3EVのコマと、徐々に露光量の多いコマに変えながらプリントしていくと、どこかで印画紙上のゾーン1を得られるコマにたどり着きます。 そこが、ネガフィルム上でのゾーン1になります。
本来でしたらば、測光値-4EVのコマでゾーン1を得られるのが標準ネガでなくてはなりませんから、-4EVからどれだけズレていたかで、この現像におけるそのフィルムの実際の感度が分かります。
仮に、測光値-3EVのコマがゾーン1になった場合、1EVだけズレていますので、テストの際に基準にした感度が400でしたらば、実際のフィルム感度は200だった、という事です。
測光値-3 1/3EVのコマでゾーン1を得られた場合、ズレていたのは2/3EVだけですから、実際の感度は250、ズレていたのが1/3EVだけだったなら320です。
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さて、これでフィルムの実感度は分かったようですが、実はこの感度というやつは、現像を変えると若干変化してしまいます。
ゾーン1部分よりも少ない露光量のところでも、プリントではゾーン1に達しないまでもネガ上ではうっすら濃度があるはずですが、現像時間を長くすると、この薄い部分が少し濃くなって、ゾーン1濃度を得られてしまうかも知れません。
逆に、現像時間を短くすると、ゾーン1としていたコマがさらに薄くなり、印画紙上でゾーン1を得られなくなってしまうかも知れないのです。
そこで、とりあえずこのテストで得た感度で再度テストを行い、今度は現像が適正であったかどうかを検証する必要があります。 現像が短ければネガのコントラストは低く、現像が長ければネガのコントラストは高くなる。 そして、そのネガのコントラストは標準の印画紙に合わせるのだ、という事になっていましたから、今回のテストの現像が印画紙に対して適正だったかどうかを試すわけです。

現像時間の検証
ひとまず、フィルムの実感度が仮に決まったら、今度はその感度を用いて再度テストを行います。 今度はフィルム現像の「量=時間」を確かめるテストですから、すなわちネガのコントラストを確かめる、という事になります。
先ほどと同じように無地の被写体を撮影し、プリントするわけですが、測光値-4EVがプリントでゾーン1を得られる露光量のための、カメラや露出計にセットする感度は分かっていますので調べなくてもいいわけです。 調べるのは、逆にハイライト側です。
要するに、どれだけ露光量が多いところまで印画紙にプリントできるのかという事。
ダイナミックレンジ9EVを標準的な被写体のコントラストである、という風に仮定して、暗い方に向かって4EVまでは感度という形で設定しましたので、測光値+4EVが、印画紙上で白トビせず、かといって暗すぎないように、ネガのコントラストがあれば良いのです。
白トビしない、というのはわかりやすいですが、暗すぎない、というのは主観的なので難しい基準です。 しかし、測光値+5EVが白トビして、+4EVが白トビしなければ、それはゾーン10とゾーン9として考えて良いわけですから簡単ですね。
先ほどと同じ、無地の被写体を段階露光します。
測光値+4EV前後を刻んで露光し、現像します。
素ヌケのコマで印画紙上に最大濃度を得られる最短の露光時間でテストストリップをプリントします。
ネガの薄いコマ、つまり露光量の少ないコマからプリントしていき、印画紙上で白トビするまで続けます。
ここで、測光値+4EVのコマは白トビせず、測光値+5EVのコマが白トビしたら、今回の現像は、現像量=現像時間が適正です。
+5EVのコマが白トビせず、印画紙上で薄いグレーになるようでしたら、それはネガのコントラストが不足ですから、現像不足=現像時間が短いという事になります。
+5EVまで行かず、+4EVのコマで白トビしてしまったら、それはネガのコントラストが高すぎで、現像過多=現像時間が長い、という事になります。

さて、このテストでネガのコントラスト=現像時間が適切であることが分かったら、この段階で標準現像と、その現像でのフィルム感度は確定です。
この感度は、ゾーン1というディープシャドウを基準にして決めてありますので、シャドウ基準実効感度とボクは呼んでいます。

テストした現像時間では、ネガのコントラストが適正でなかった場合、現像時間を変えて再度テストすることになりますが、現像時間を変えるとゾーン1付近の濃度も変化する可能性がありますので、感度も合わせてテストしなくてはいけません。
とはいえ、大体のところは既に分かっているので、今回のように2回に分ける必要はなく、測光値-4EV前後、測光値+4EV前後をそれぞれ段階露光で、1本のフィルムに撮影し、現像、テストプリントすれば良いのです。
一般的に、コントラストのテストで1ゾーン分ズレていた場合、現像時間は15から18%くらいの調整になる事が多いようです。

さて、こうして標準現像とシャドウ基準実効感度が決まりました。
もちろん、これは被写体のダイナミックレンジが9EVであり、印画紙は2号なり3号と、テストに用いたものに対して調整してあるわけですが、仮に実際の被写体のダイナミックレンジが8EVや7EVしかなかったり、逆に10EVと多くあったとしても、プリント時に印画紙の号数を変えれば容易に対応できます。
また、9EVというのはボクの経験ではやや余裕のある幅だと思いますし、測光値-4EVより暗い部分というのにはあまり遭遇しませんから、測光さえ間違わなければシャドウが潰れた、という事もほとんど起きません。
逆に、測光値+4EVよりも明るい部分というのは光源や反射するガラスなど頻繁に出くわしますが、プラス側はプリントでリカバーしやすいですからそれほど心配しなくて良いでしょう。 それよりも、ネガフィルムではゾーン1濃度を得られる露光量、つまり正しく測光した場合の測光値-4EVより少ないと、なんら印画紙上に濃度を出せないという仕組みが今回のテストで分かったと思いますので、測光はシャドウを基準にして露光不足は避ける、というネガフィルムでの撮影の鉄則を守るようにしましょう。